SOFC/SOECセルスタックの外観検査におけるラインスキャンカメラの活用
インターコネクターのコーティング不良を迅速かつ正確に検出
- 顧客
- Elcogen Oy
- 所在地
- フィンランド・ヴァンター
- 日付
- 2026年6月
SOFC(固体酸化物形燃料電池)/SOEC(固体酸化物形電解セル)システム向けのセル、セルスタック、モジュールを製造しているElcogen社。同社では、SOFC/SOECセルスタックの寿命を延長するため、部材や材料層の欠陥を迅速かつ正確に検出する方法を模索していました。以下では、Baslerラインスキャンカメラを搭載した外観検査(AOI)装置により、インターコネクター(金属接続板)のコーティング不良を検出し、目視検査を上回る速度・精度・信頼性を実現することで、製造の効率化に成功した事例について解説します。
早期の欠陥検出によるセルスタックの耐久性向上
インターコネクターのコーティング不良は、SOFC/SOECセルスタックの寿命短縮につながります。しかし、製造規模がGW級へ拡大するなか、人間による目視検査では信頼性が確保できません。そこで、製造現場にマシンビジョンを導入し、コーティング不良を早期に発見することで、積層工程に進む前に欠陥のあるインターコネクターを排除する手法が採用されました。
インターコネクターの保護コーティング
Elcogen社製elcoStack(3kW級セルスタック)は、elcoCell(セラミックセル)とフェライト系ステンレス鋼製のインターコネクターを交互に積層した構造になっています。燃料の化学エネルギーを電気エネルギーと熱に変換するSOFC用途、電気エネルギーによって水蒸気を水素と酸素に分解するSOEC用途にかかわらず、elcoStackの品質を確保するうえで、インターコネクターの保護コーティングは非常に重要です。
650°C以上の環境下で高温腐食とクロム揮発を防止するには、インターコネクターをコーティングで保護しなければなりません。コーティングに少しでもムラがあると、セルの劣化が加速し、セルスタック全体の寿命が短くなります。そのため、性能と耐久性の両方の観点から、積層前にコーティング不良を検出することが求められました。
ラインスキャンカメラによる品質管理
Elcogen社では、これまでインターコネクターの保護コーティングを目視で検査していたため、作業者によって品質にバラつきが発生していましたが、ラインスキャンカメラ搭載の外観検査装置を導入したことで、人的ミスがなくなり、検査の信頼性と一貫性が大幅に向上しました。
既存の製造設備に適した装置設計
本事例の外観検査装置の開発要件は、以下の通りです。
既存の製造設備への据え付け
78cm×35cm×30cmの省スペース設計
検査時間の短縮
低コスト
単一製品/複数製品(4種)/製品フレーム全体の検査への対応
上記の要件を満たすことに加え、インターコネクターの両面を同時に撮影することで、検査時間の短縮と品質管理の効率化を実現しました。しかも、専用の治具が付属しているため、製品の種類にかかわらず、装置調整なしでシームレスに検査を行うことが可能です。

Basler racer 2 S
コンパクトなボディ&高度なI/O機能
本事例の外観検査装置は、システムインテグレーターのLateral Engine社がライン照明、Basler racer 2 S(r2L4096-29gm)、Baslerレンズ(C11-3520-12M f35mm)を組み合わせて設計・開発したもので、均一な光を照射しながら、2台のモノクロカメラでインターコネクターの上面と下面を同時に撮影することができます。そのうち、Basler racer 2 Sについては、Gpixel社製CMOSセンサーGL3504搭載のGigEモデルが採用されており、最大画素数4K・ラインレート29KHzに対応しているほか、以下のような特長があります。
55.5mm×29mm×29mmのコンパクトなボディと100gの軽量設計
被写体の搬送速度とカメラの撮像速度を同期するラインレート調整機能を内蔵

光学要件に基づいたカメラの選定
3.5µmの微細なピクセル
本事例では、十分な空間分解能を確保しながら、装置全体を小型化する必要があったため、以下の特長を持つBaser racer 2 Sが採用されました。
小さなセンサーサイズ:ピクセルサイズ3.5µm、センサー幅12.8mmに対応し、Cマウントレンズを搭載したコンパクトな装置を実現(ピクセルサイズ7µmの場合、焦点距離と撮影距離が長くなるため、大型で高価なFマウントレンズが必要)
空間分解能と視野角の両立:空間分解能0.03mm/pixel、視野角110mmに対応し、微細な構造を鮮明に可視化
短い撮影距離:焦点距離35mm、撮影距離約340mmに対応し、Cマウントレンズによる撮像に最適
3.5µmの微細なピクセルを誇るracer 2 Sは、対応するレンズと組み合わせることで、分解能と視野角を両立させながら、コンパクトかつ高効率な外観検査装置を構築することができます。

racer 2 Sは、性能とコストの両面で納得のいく選択でした。インターコネクターのコーティング検査を自動化したことで、積層品質が向上しただけでなく、製造の効率化にもつながっています。

※本事例では、開発の一部において欧州連合(EU)の助成を受けています。
使用製品
SOFC/SOECセルスタックのコーティング不良を検出するには、以下の製品が最適です。
Elcogen社について
Elcogen社は、グリーン水素製造、ゼロエミッション発電をはじめ、クリーンエネルギーへの移行促進に使用されるSOFC/SOECの関連部材を開発・製造している専門企業です。2001年に創業し、イギリスに登記上の所在地、エストニア・タリンに本社、エストニアとフィンランドに研究開発拠点を置いています。同社のセル、セルスタック、モジュールは、鉄鋼・燃料・海運・エネルギーなど脱炭素が求められる業界を中心に、世界各国のSOFC/SOECシステムに広く導入されるなど、汎用性の高い設計と優れた効率性・柔軟性・信頼性により、再生可能エネルギーの未来を切り拓く製品として注目されています。現在、同社では、ネットゼロに向けた世界的な動きに合わせて、エネルギー問題の解決と持続可能な社会の実現に貢献するため、パートナー企業とともに、さまざまなSOFC/SOECシステムの開発支援に取り組んでいます。
Lateral Engine社について
Lateral Engine社は、フィンランド・エスポーに本拠地を置く、マシンビジョンに特化したシステムインテグレーターです。ビジョンシステムの構築や基盤アルゴリズムの実装に関する豊富なノウハウを活かし、システム設計、システムインテグレーション、ソフトウェア開発、製品開発、技術研修など幅広いサービスを提供しています。