活用事例

高速ウエハー検査におけるTDI撮影の安定化

半導体製造の前工程では、ウエハーの品質確保とCMP(化学機械研磨)などの洗浄・研磨工程の管理を目的として、ウエハー表面の微細な欠陥(異物、キズ、曇り、汚れなど)を検出しなければなりません。TDI撮影を導入すれば、低照度下でも光感度とスループットを向上させることができますが、検査の安定性を維持するには、撮像フローの全体を通して正確な同期、一貫したキャリブレーション、リアルタイムな画像の前処理が必要になります。

高速ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの撮像の安定化

ウエハー検査の高速化、検査範囲の拡大、欠陥の微細化が進むなか、安定した撮像を確保するには、撮像フロー全体を通して一貫した同期、再現性の高いキャリブレーション、スケーラブルかつリアルタイムな画像の前処理が求められます。


エンコーダーの同期が崩れまま、TDI撮影を継続すると、画像歪みや輪郭ボケが発生
エンコーダーの同期が崩れまま、TDI撮影を継続すると、画像歪みや輪郭ボケが発生

1. 高速TDI撮影における画質の維持

TDI撮影の画質は、光学設計、位置合わせ、動作同期に大きく左右されます。これらに少しでも問題があると、画像にブレが発生します。

特に高倍率撮影では、被写界深度が浅くなるため、ピント位置の変化や機械的振動の影響を受けやすくなります。また、実際のウエハーは平坦ではなく、表面に傾きや反りがあるため、TDIラインスキャンカメラの撮影倍率が大きくなると、ピントずれや画像歪みにつながります。

一貫した画質を実現するには、システムの開発・運用の両段階において、同期と位置合わせを慎重に行わなければなりません。主なポイントは、以下の通りです。

  • アライメントマークに基づく位置合わせ:TDI撮影における位置ずれを補正

  • ROI抽出したラインプロファイルの解析:画像全体のピントと同期状況を検証

  • エンコーダーの適切なキャリブレーション:動体撮影に伴う画像のブレを低減

高速撮影が求められるウエハー検査では、同期の安定性が欠陥の視認性に直接影響します。

2. 照明・撮影条件に左右されない一貫したキャリブレーション

照明角度・スキャン方向・環境温度にバラつきがあると、影や背景の撮像が不安定になり、ウエハー検査の再現性低下につながります。

環境変化にかかわらず、ウエハーの欠陥を正確に検出するには、照明・撮影機器に対して一貫したキャリブレーションを行わなければなりません。

さらに、ウエハー検査では、順方向スキャンか逆方向スキャンかによって、照明光と反射光の挙動が変化するため、キャリブレーションを行う際は、実際の背景や照明角度、スキャン方向も考慮に入れるとよいでしょう。主なポイントは、以下の通りです。

  • フラットフィールド補正(FFC):照明条件の変化にかかわらず、一貫した撮像を確保

  • スキャン方向に左右されないキャリブレーションプロファイル:順方向スキャン/逆方向スキャンにおける撮像を安定化

  • ヒストグラム解析&偽色表示:検査時の照明ムラに対応しながら、キャリブレーションを簡易化

一貫したキャリブレーションを実現すれば、照明・撮影条件にかかわらず、ウエハー検査の精度を向上させることができます。

マルチROIによる検証:ウエハーのTDI撮影における同期・ピント調整・信号品質を安定化
マルチROIによる検証:ウエハーのTDI撮影における同期・ピント調整・信号品質を安定化
ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの構造
ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの構造

3. リアルタイムな処理による高速撮影の維持

低照度の高速製造ラインにおいて、撮影速度と解像度を向上させると、欠陥の安定した検出が難しくなります。

例えば、画素数16KのTDIラインスキャンカメララインレート500kHzで運用する場合、約8.2GB/sの速度でRAW画像を生成できます。しかし、残された前処理の時間が数μsしかないため、複数の産業用PC(IPC)/GPUを使用したとしても、ウエハー検査中の撮影ごとに機器を停止させなければならずスループットが低下します

このような状況で安定した画質を維持するには、限られた時間の中で画像の前処理と高精度なデータ転送を行う必要があります。主なポイントは、以下の通りです。

  • リアルタイムな画像の前処理:連続撮影を行いながら、安定した画質を維持

  • 背景補正&適応的二値化:ウエハーの表面形状・質感にかかわらず、撮像の安定性を向上

  • 高速・高精度なデータ転送:フレームグラバーと産業用PC/GPUの間でRAW画像を連続転送

  • 列ノイズの抑制:低コントラストな欠陥を可視化

高速ウエハー検査において、画像データをリアルタイムかつ安定して処理することは、画質の維持と同様に重要です。

4. スケーラブルな処理とデータ転送の実現

検査のスループットと解像度の向上に伴い、高速処理に加え、システム全体の拡張性も重視されるようになっています。

複数の産業用PC/GPUに処理を分散すれば、同期とデータ管理が複雑になるものの、拡張性は大幅に向上します。主なポイントは、以下の通りです。

  • 複数の産業用PC/GPUへの処理の分散:処理能力を向上させることで、広範囲の検査に対応

  • フレームグラバーによる画像の前処理:広帯域幅のデータ管理を簡易化

  • スケーラブルなシステム構造:将来的なFPGA処理の導入に対応

ウエハー検査における画像の高解像度化とデータの大容量化に対応するには、優れた拡張性を備えたシステムが欠かせません。

Basler TDIビジョンシステムの詳細はこちら
高速ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの信頼性・拡張性の向上
高速ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの信頼性・拡張性の向上
TDIビジョンシステムは、同期や位置合わせの安定性が画質を大きく左右します。例えば、位置ずれは積算時の画像のブレにつながり、ピントずれは欠陥の視認性に直接影響します。
David Kim
David Kim
光学ソリューションチームリーダー ‍| AES
高速検査における課題は、データ転送だけにとどまりません。検査の信頼性を確保することはもちろん、安定した画質の維持や同期、キャリブレーション、リアルタイムな画像の前処理も非常に重要です。
Jeffrey Baik
Jeffrey Baik
プロダクトマーケットマネージャー

ウエハー検査向けTDIビジョンシステムの設計における注意点

ウエハー検査の信頼性は、センサー性能だけで決まるものではありません。TDI撮影の速度・安定性を維持するには、以下の点にも配慮する必要があります

  • 正確な同期

  • 光学系の位置合わせとピント調整

  • 安定した照明とキャリブレーション

  • リアルタイムな画像の前処理

  • 下流側の処理構造

検査の解像度とスループットが向上するなか、画質の維持は、帯域幅とストレージの拡張と同様に重要になっています。

高速ウエハー検査にTDI撮影を導入する技術的メリット

TDI撮影、リアルタイムな画像の前処理、システムレベルのキャリブレーションを組み合わせれば、製造環境にかかわらず、スループットを向上させながら、安定した画質を維持できます。

主なメリット

  • 連続高速撮影においても、欠陥を安定して検出

  • TDI積算中の同期精度が向上

  • 照明・スキャン条件にかかわらず、キャリブレーションの一貫性を確保

  • 下流側の処理負荷や必要ストレージ容量が減少

  • 上流側でリアルタイムな画像の前処理を実現

  • 優れた拡張性により、大型ウエハーの表面検査に対応

使用製品

‍‍ご紹介したソリューションの導入には、以下‍の製品が最適です。