製パン工場における3Dロボットビジョンの活用
反射物検知の課題
幅広い商品を生産している製パン企業では、人材リソースの最適化やパンの箱詰め作業の効率化が求められていますが、そのための自動化システムの開発にはさまざまな課題がありました。
主な課題
パンの種類が多く、それぞれの大きさや形状も異なるため、ベルトコンベヤー上における位置や向きの把握が困難
透明なパン袋はコントラストや反射性が低く、光学センサーによる検知が困難
ソリューション:3Dコンピュータービジョン搭載型ピックアンドプレースロボット
KINE Robotics社がBasler、OEM Finland社と共同開発した3Dロボットビジョンシステムには、ピックアンドプレースロボットが搭載されており、ベルトコンベヤー上を流れる大きさや形状の異なる商品を正確にピックアップし、箱詰めすることができます。これまで人間の手で行っていたパンの箱詰め作業を自動化することで、生産工程を高速化するとともに、不良率も低減しました。
システムの仕組みは次の通りです。まず、ベルトコンベヤーの上に設置されたBasler blazeがToF方式で3D撮影を行い、30万点以上のXYZ座標から成るポイントクラウドを生成します。そして、Matrox Imaging社製画像処理ソフトウェアMatrox Design Assistant Xを介してポイントクラウドを距離画像に変換した後、2D画像解析ツールを使用してロボットのグリップ位置を決定します。なお、ロボットにはストーブリ社製スカラロボットTS2-60が採用されました。このロボットは、TCPを介してストーブリ社製ソフトウェアVALtrackと通信を行うことで、カメラから送られてきたグリップ位置の座標情報、光学トリガーセンサーの信号、ベルトコンベヤーのエンコーダー信号を組み合わせることができます。
コントラストに基づく2D画像解析とは異なり、3Dカメラを使用してベルトコンベヤー上の商品の位置や向きをポイントクラウドとして記録することが、今回のシステムの大きな特長です。しかも、パン袋の色にも左右されないので、撮影の安定性がさらに向上しました。
3Dコンピュータービジョン搭載型ピックアンドプレースロボットのメリット
明るさやコントラストの影響を受けないToF方式を採用し、5mmの精度を実現
最大フレームレート30fpsに対応し、動体撮影に最適
照明とキャリブレーション済みのレンズを内蔵することにより、ハードウェアのセットアップにかかる労力を軽減
人の目に見えない波長940nmの近赤外線を採用しているため、作業者が近くにいる場合でも使用可能
IP67対応のカメラ筐体を採用し、産業グレードの耐久性を実現
汎用性の高いGigE Vision&GenICam(GenTL)に準拠しているため、システム構築が簡単
今回開発された3Dロボットビジョンシステムでは、照明内蔵型ToFカメラのBasler blazeを採用することで、設計やコスト面のムダを省きながら、箱詰め作業の自動化・高速化に成功しました。今ではロボットにより1分間に25~30個のパン袋を処理できるなど、効率的かつ予測可能な生産を実現しています。
使用製品
ご紹介したソリューションの導入には、以下の製品が最適です。