フォトメトリックステレオによる動体撮影と表面特徴の3D復元
マシンビジョン技術の一種として確立されているフォトメトリックステレオは、印刷された模様やテクスチャーの影響を受けることなく、表面特徴を3D復元する撮影手法ですが、これまでは静止物にしか使用できませんでした。以下では、ソニー社製IMX900のQuad Shutter Control(4分割シャッター制御)機能を活用し、フォトメトリックステレオによる高精度な動体撮影を可能にする方法について解説します。

フォトメトリックステレオの原理と動体撮影が難しい理由

フォトメトリックステレオによる2D外観情報と表面の凹凸の識別
微細な表面欠陥(凹み、亀裂、キズ、変形など)の検出に使用されるフォトメトリックステレオは、従来の2D撮影と異なり、物体表面の外観の代わりに物体表面の形状に焦点を当てることで、図やラベルが印刷された製品、質感のある製品、色の異なる製品を効率的に検査することができます。
フォトメトリックステレオシステムの仕組みと制約
フォトメトリックステレオシステムは、異なる照明角度から複数の画像を撮影した後、陰影の変化を解析し、物体表面の形状を3D復元します。その際、外観情報と形状情報を分離することで、模様やテクスチャーに隠れた表面欠陥を可視化できます。
しかし、従来のフォトメトリックステレオシステムは、撮像間のわずかな位置ずれが3D復元時の誤差と検査精度の低下につながるため、撮像中に対象物の位置を固定しなければならず、静止物や一時停止可能な製造ラインにしか使用できませんでした。
Quad Shutter Control:1フレーム内で照明角度の異なる4枚の画像を撮影
Baslerでは、ソニー社製IMX900のQuad Shutter Control機能を活用し、1フレーム内で照明条件が異なる4枚の画像を撮影することに成功しました。

フォトメトリックステレオによる動体撮影の実現
ソニー社製IMX900のQuad Shutter Controlは、一度の撮像で4回の露光を行う機能です。これを上手く工夫すれば、フォトメトリックステレオによる動体撮影が可能になります。
従来のフォトメトリックステレオシステムは、4枚の画像を順番に取得するため、撮像間に一定の時間差が生じていました。しかし、対象物が動いている場合、この時間差が位置ずれにつながり、3D復元時の精度に影響を及ぼします。
一方、Quad Shutter Control機能を活用すれば、4方向に設置された照明を同期しながら、数マイクロ秒以内に4回の露光が可能になるため、撮像間隔が大幅に短くなるだけでなく、対象物の移動を最小限に抑えながら、フォトメトリックステレオ解析に必要な情報をすべて収集できます。
これにより、対象物の動きを止めることなく、フォトメトリックステレオシステムの信頼性と検査精度が向上します。

正確な露光タイミングによる一貫した動体撮影
Quad Shutter Control機能は、2x2の4つの画素単位で個別に露光タイミングを設定できるため、一度のトリガーでフォトメトリックステレオ画像のベースとなる、露光時間の異なる4枚の画像を撮影することが可能です。
しかも、極めて短い時間で連続撮影するため、フォトメトリックステレオ解析に必要な4枚の画像を取得している間も、対象物の位置がほぼ変わりません。
例えば、従来の100fpsのカメラは、連続撮影時に約10ミリ秒の間隔が必要ですが、Basler独自のフォトメトリックステレオシステムであれば、4つの異なる露光タイミングを設定したうえで、画像1枚当たりの撮影時間をマイクロ秒単位に抑えられます。
さらに、4方向に配置した照明を上手く同期することで、撮像間隔がほぼゼロになるため、これまで難しかったフォトメトリックステレオシステムによる動体撮影を実現できます。
お問い合わせはこちらフォトメトリックステレオの大きな課題は、異なる方向から照明を当てながら、撮像間の対象物の移動を最小限に抑えなければならないことにあります。動体撮影を行いながら、表面特徴を正確に3D復元したい場合は、Quad Shutter Control機能により撮像間隔を短くするとよいでしょう。
高速製造ラインにおけるフォトメトリックステレオシステムの導入
Quad Shutter Controlを活用すれば、物体の動きやスループットの関係上、これまで撮像が難しかった用途においても、フォトメトリックステレオシステムを導入することができます。
製造ラインを止めないインライン検査
色・模様・テクスチャーと表面欠陥の識別
検査精度とスループットの両立
主な用途には、図やラベルが印刷された製品や、表面に質感がある製品をはじめ、従来の2D撮影では表面欠陥の識別が難しかった製品の検査が含まれます。


