レンズ

ビジョンシステムの画質向上:カメラに合ったレンズの選定方法

ビジョンシステムを使用して高画質の鮮明な画像を撮影するには、高性能なカメラだけでなく、そのカメラに合ったレンズも必要になります。以下では、解像力、焦点距離、絞りなどの技術仕様を比較しながら、実際の撮影条件に応じて最適なレンズを選定する方法について解説します。

  • 最終更新日: 2026/02/02

  • 読了時間:約 17 分

レンズの選定フロー

  • カメラマウントの確認

  • センサーサイズに合ったイメージサークルの選定

  • 視野角と撮影距離に基づく焦点距離の決定

  • センサー画素数とレンズ解像力のバランスの最適化

  • 絞り、撮影距離、波長範囲、その他要件の検討

レンズの種類

レンズの種類は、光学設計や焦点距離の可変性によって異なります。

光学設計に基づくレンズの分類

  • エントセントリックレンズ:多くのマシンビジョン用途に採用されているレンズとして、人間の目と同様に遠い物体が小さく、近い物体が大きく見える遠近画像を撮影可能

  • テレセントリックレンズ:遠近歪みのない実寸画像の撮影に最適なレンズ

焦点距離の可変性とフォーカスリングの有無に基づくレンズの分類

レンズ種別

焦点距離

ピント調整

主な用途

備考

単焦点レンズ(フォーカスリングなし)

固定

不可(単焦点)

産業用カメラ、旧型の携帯電話

調整不可

単焦点レンズ(フォーカスリングあり)

固定

調整可能(手動/自動)

マシンビジョン、産業用光学機器

視野角が一定、高画質

可変焦点レンズ

変更可能

焦点距離の変更後にピントの再調整が必要

IPカメラ、防犯監視

柔軟性が高い、ピントの再調整が必要

ズームレンズ

変更可能

ズーム時でもピントを維持

民生用カメラ、特殊な撮影用途

焦点距離の変更後にピントを自動調整

本記事では、多くのマシンビジョン用途に使用されているエンセントリックレンズについて取り上げます。

カメラとの機械的接続に適したマウント

レンズを選定する際には、事前にカメラの仕様を確認することが非常に重要です。カメラマウントとレンズマウントが合わないと、カメラ本体とレンズを確実に接続できません。

マシンビジョンカメラのマウント一覧

マウント種別

接続機構

フランジバック

対応センサーサイズ

Fマウント

バヨネット

46.5mm

最大約42mm(大型センサー)

Cマウント

ねじ込み

17.5mm

最大4/3"

CSマウント

ねじ込み

12.5mm

1/1.8"(まれに4/3")

Sマウント

ねじ込み

規定なし

1/1.8"(まれに2/3")

レンズによって異なるフランジバック
レンズによって異なるフランジバック

フランジバック

レンズの取り付け面からイメージセンサーまでの距離をフランジバックといいます。光学性能を最大限に発揮するため、それぞれのレンズには定められたフランジバックがあり、通常は変更できません。

また、フランジバックはマウントごとに値が決まっています。例えば、Cマウントのフランジバックは17.526mmです。

接続機構

レンズの接続機構には、以下の2種類があります。

  • バヨネット:レンズを差し込んで回し、爪をかみ合わせて固定する安定性の高い接続機構(Fマウントのみ)

  • ねじ込み:レンズのネジ山を回して固定するコンパクトな接続機構

センサーサイズに合ったイメージサークルの選定

口径食(画像周辺部が暗くなる現象)を抑えながら、レンズを通過した光が均一な明るさでセンサー面に結像する円形の範囲をイメージサークルといいます。レンズマウントの種類だけでは、正確なイメージサークルがわからないため、レンズの製品仕様にある「最大イメージサークル」を確認するとよいでしょう。

イメージサークル
イメージサークル:画質の低下を抑えながら、レンズを通過した光が均一な明るさでセンサー面に結像する円形の範囲

イメージサークルが小さい

センサーサイズと同様に、イメージサークルもインチ(型)で表されます。例えば、1/3型のCマウントレンズは、1/3型センサー搭載のカメラと組み合わせることで、イメージサークルを最大限に利用できます。しかし、これを1/2型センサー搭載のカメラに変更した場合、イメージサークルがセンサーサイズより小さくなるため、口径食が発生するおそれがあります。

イメージサークルが大きい

2/3型の大型レンズと1/3型センサー搭載のカメラを組み合わせると、口径食のない鮮明な画像を撮影できますが、イメージサークルの大部分がムダになるだけでなく、レンズが大きいためにコストも増大します。コストパフォーマンスを最大化するには、可能な限り小型のレンズを選択するとよいでしょう。

解像力&ピクセルサイズ

ビジョンシステムの画質を向上させるには、ピクセルサイズの小さい高画素センサーだけでなく、十分な解像力を備えたレンズも必要になります。レンズの解像力が足りないと、微細な構造物を可視化できません。このセクションでは、解像力とピクセルサイズの重要性と、レンズ性能の評価方法について見ていきます。

レンズの解像力:1mm当たりのラインペア数(lp/mm)
レンズの解像力:1mm当たりのラインペア数(lp/mm)

解像力の単位:lp/mm

レンズの解像力は、1mm当たりのラインペア数(lp/mm)、つまり1mmの中に識別可能な白と黒の縞が何本存在するかで決まり、この値が大きいほど解像力は高くなります。センサーの性能を最大限に引き出すには、十分な解像力を確保しなければなりません。

一般的な解像力テストチャート
レンズの解像力評価に使用されるテストチャート

解像力の指標:MTF曲線

MTF(変調伝達関数)曲線は、画像の中央から端までのレンズの解像力を示すものです。多くのレンズメーカーでは、白と黒の縞が印刷された解像力テストチャートを使用してMTF曲線を作成し、レンズ性能の客観的評価指標として製品仕様に掲載しています。


解像力&ピクセルサイズ

解像力とピクセルサイズの関係性

センサーのピクセルサイズがどんなに小さくても、レンズの解像力が低いと、被写体を細部まで捉えられません。例えば、5MPのセンサーを使用する場合、レンズも5MPに対応した解像力が求められます。レンズによっては、レンズ選定の参考資料として対応画素数(MP)が表記されている場合もありますが、その他の技術仕様(lp/mm、MTF曲線など)の確認も欠かせません。

ビジョンシステムの画質を最大限に引き出すには、センサー画素数とレンズ解像力のバランスを最適化する必要があります。

焦点距離とセンサーサイズの関係性

レンズの光学中心から焦点までの長さを焦点距離といい、mmで表されます。レンズを通過した平行光は焦点で交差するため、レンズの屈折力によって焦点距離が変わります。

焦点距離の撮像への影響

焦点距離が長いほど、レンズの望遠性能は向上します。一般的な民生用レンズと比較した場合、スポーツカメラマンやパパラッチが使用する巨大な望遠レンズは焦点距離が非常に長く、反対に広角レンズや魚眼レンズは焦点距離が短くなります。

代表的な焦点距離

焦点距離(mm)

レンズ種別

視野角(2/3型センサーの場合)

視野角(1/2.5型センサーの場合)

2

魚眼レンズ

非常に広い

広い

6

広角レンズ

広い

普通

12

環境光

普通

狭い

35

望遠レンズ

狭い

非常に狭い

100

超望遠レンズ

非常に狭い

極めて狭い

焦点距離の計算

最適な焦点距離は、センサーサイズ、被写体サイズ、撮影距離によって異なります。多くのレンズメーカーは、自社のウェブサイトでレンズセレクターを公開しているため、焦点距離の計算に活用するとよいでしょう。

このほか、以下の計算式からも焦点距離を求めることができます。

最適な焦点距離の選定

算出した焦点距離とレンズの焦点距離が対応しているとは限りません。一般的なレンズの固定焦点距離は、4mm、6mm、8mm、12mm、16mm、25mm、35mm、50mm、75mm、100mmです。算出した焦点距離がこれらに当てはまらない場合は、焦点距離が短めのレンズを使用することで、視野角が広くなり、解像度も向上します。なお、柔軟性が高いズームレンズもありますが、単焦点レンズより画質が低くなるため、注意が必要です。

焦点距離の異なる画像の比較

比較画像が示す通り、焦点距離が長くなると、被写体が拡大され、視野角は狭くなります。そのため、レンズを選定する際には、センサーサイズとその他の撮影条件を考慮したうえで、最適な焦点距離を見つける必要があります

レンズ選定:焦点距離の決定
レンズの選定方法:焦点距離
レンズ選定:焦点距離の決定

絞り&照明条件

カメラの絞りは、画質と明るさに直接影響します。F値(絞り値)は、絞り穴の大きさを数値化したもので、「焦点距離÷有効口径(絞り穴の直径)」の計算式で算出されます。

絞り&照明条件
F値を小さくすると、被写界深度が浅くなる代わりに小絞りボケが発生するおそれがあるため、絞り過ぎには注意が必要

F値の画質への影響

F値が大きいほど、絞り穴は小さくなり、センサーに当たる光量が減少します。暗所撮影を行う場合は、F値を小さくして光量を増やすとよいでしょう。

ただし、F値を小さくすると、被写界深度が浅くなって収差(口径食など)が軽減する代わりに、光の回折によって小絞りボケが発生するおそれがあります。

最適なF値は、レンズによって異なります。F値を決定する際は、被写界深度と回折限界のバランスを考慮するとよいでしょう。

まとめ:絞りの絞り過ぎ・開き過ぎを防止しながら、照明条件に合ったF値を見つけることが重要です。

撮影距離と倍率の関係性

大部分のマシンビジョンレンズは、一般的な産業現場におけるカメラと被写体の距離を考慮して、約50cmの撮影距離に対応しています。

標準的なマシンビジョンレンズの場合、センサー上の像のサイズと被写体のサイズの比率が1:10~1:1の範囲内にあれば、最適な画質を実現できます。しかし、これはレンズの最短撮影距離(MOD)の影響を受けます。

接写リングを使用することで、撮影距離が短くし、倍率を上げることも可能ですが、標準レンズは高倍率撮影向けに設計されていないため、画質が大幅に低下してしまいます。画質を確保したい場合は、可能な限り接写リングを使用しないほうが無難です。

倍率が0.1倍~等倍(1:10~1:1)の場合は、マクロレンズを使用することをおすすめします。

一方、倍率が5倍(5:1)以上の場合は、顕微鏡対物レンズを選択するとよいでしょう。

波長範囲

光の波長(出典:Wikipedia)

従来のレンズは、可視光帯域(400~700nm)向けに設計されているため、近赤外帯域ではピントが合いませんが、ある程度の画像のブレが許される単純な近赤外撮影であれば、問題ありません。

しかし、可視光と近赤外光の両方を捉えた鮮明な画像を撮影したい場合は、400~1000nmの広い波長範囲に対応したレンズが必要になり、コストが増大するだけでなく、その他性能の制約にもつながります。

レンズ選定チェックリスト

レンズを選定する際には、以下の条件を満たしているか確認するとよいでしょう。

  • レンズマウント:カメラ本体を確実に接続できるマウントを備えている

  • イメージサークル&センサーサイズ:レンズのイメージサークル(製品仕様の「最大イメージサークル」)とカメラのセンサーサイズが合っている

  • オンラインツール:メーカーのレンズセクレターを使用して最適な焦点距離を算出している

  • レンズ種別:要件に応じて可変焦点レンズ/単焦点レンズを選択している

  • 解像力:レンズがセンサー上の画素を十分に解像できる(対応画素数が高いだけでは不十分)

  • 絞り:F値と絞り形式(製品仕様の「最大口径比」)について理解している

  • 波長範囲:可視光撮影のみで十分か、近赤外撮影が必要かどうかを確認している

  • 撮影距離:カメラと被写体間の最短撮影距離(MOD)や、倍率と画質への影響について留意している

レンズ&レンズアクセサリー

Baslerでは、ビジョンシステムの構築に必要なレンズとレンズアクセサリーを豊富に取り揃えています。撮影条件に応じて最適なレンズが見つかるレンズセレクターも公開していますので、ぜひご利用ください。

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