マシンビジョンにおけるCoaXPress-over-Fiberの導入
高速光伝送により、次世代の画像処理を実現
CoaXPress-over-Fiber(CoF)は、業界内で定評のあるCoaXPress(CXP)と光伝送を組み合わせた産業用画像処理向けインターフェース規格です。従来の電気伝送と比較して、信号品質とデータ転送距離・速度が向上しているだけでなく、外部ノイズの影響を受けにくいという特長もあります。
CoaXPress-over-Fiberについて知っておくべきこと
優れた性能により多くのマシンビジョンカメラに採用されているCoaXPress。その拡張規格として策定されたCoaXPress-over-Fiberは、電気伝送の代わりに光伝送を採用しているため、これまでにないさまざまなメリットが得られます。
1チャンネル当たり最大100Gbpsの広帯域幅を実現
シングルモードファイバー(SMF)の場合、最大40kmの長距離データ転送が可能(マシンビジョン向けのマルチモードファイバー(MMF)の場合、最大100mまで帯域幅を維持することが可能)
大型電動モーター、溶接機、周波数変換器、Wi-Fi設備などを備えた製造施設においても、EMI(電磁干渉)やRFI(無線周波数干渉)の影響を受けにくい
柔軟性と拡張性が高い
細径ケーブルを活かした軽量かつコンパクトなシステム設計が可能
マシンビジョンにCoaXPress-over-Fiberを導入するメリット
光伝送を行うCoaXPress-over-Fiberは、1チャンネル当たり最大100Gbpsの広帯域幅を維持しながら、従来の電気伝送を大幅に上回る長距離データ転送を行うことができます。また、EMIやRFIの影響を受けにくいことも大きな特長で、産業用途の厳しい環境下でも信号品質がほぼ変わりません。さらに、帯域幅の柔軟な拡張が可能であるため、高速ビジョンシステムやマルチカメラシステムをはじめ、データ容量の大きい用途にも問題なく対応できます。
CoaXPress-over-Fiberへの移行
CoaXPressの拡張規格として策定されたCoaXPress-over-Fiberは、既存のビジョンシステムの刷新にも最適です。CoaXPress-over-Fiberに対応した機器を用意すれば、最小限のソフトウェア調整のみで、電気伝送(CameraLink、CoaXPressなど)から光伝送(CoaXPress-over-Fiber)へ簡単に移行できます。

CoaXPress-over-Fiber関連製品
Baslerでは、ラインスキャンカメラの Basler racer 2 XL や、 CoaXPress-over-Fiberプログラマブルフレームグラバー をはじめ、光伝送が可能なハードウェアを豊富にラインナップしています。また、フレームグラバーSDK、VisualApplets、pylon Software Suiteと付属ツールなどのソフトウェアも充実しており、直感操作による高精度な制御とスムーズなセットアップが可能です。このほか、TDIラインスキャンカメラを含め、必要なハードウェアとソフトウェアがセットになったCoaXPress-over-Fiber対応TDIビジョンソリューションもご提供しています。
Basler TDIビジョンソリューションの詳細はこちら光伝送と電気伝送の比較
用途に合ったインターフェースを選定する際の参考資料として、CoaXPress(電気伝送)とCoaXPress-over-Fiber(光伝送)の違いを以下に示します。
CoaXPress-over-Fiber(光伝送) | CoaXPress(電気伝送) | |
|---|---|---|
最大帯域幅 | 1チャンネル当たり100Gbps以上 | 1チャンネル当たり12.5Gbps |
最大ケーブル長 | 100m(マシンビジョン向けマルチモードファイバー)~40km(シングルモードファイバー) | 40m |
ケーブル1本当たりのチャンネル数 | 複数チャンネルに分岐可能※ | 基本的に1チャンネルのみ |
拡張性 | チャンネル数やケーブル数を追加可能 | 制約あり |
将来性 | 高い(次世代カメラに最適) | 低い(物理的制約あり) |
必要スペース | 小さい(細径ケーブル) | 大きい(太径ケーブル) |
※4分岐のケーブルを使用すれば、フレームグラバーを介して1チャンネルに4台のカメラを接続することが可能です。ただし、現状の光トランシーバーは最大4チャンネルであり、使用するチャンネル数に応じて最大帯域幅が100Gbps(25Gbps×4)、50Gbps(25Gbps×2)、25Gbps(25Gbps×1)へと変化するため、例えば1チャンネルしか使用しない場合、データ転送速度が大幅に低下します。
CoaXPress-over-Fiberの導入に関する注意点
産業現場で使用されるビジョンシステムにCoaXPress-over-Fiberを導入する場合、技術仕様に加え、ケーブルの接続や運用・保守といった要素も重要になります。主な注意点を以下に示します。
ケーブルの接続&運用
同軸ケーブルより軽量で柔らかい光ケーブルは、長距離データ転送を行う複雑なシステムの構築に適しています。また、平均曲げ半径が60mmと小さく、省スペースで取り回しがしやすいため、狭い場所や手の届きにくい場所にも簡単に接続できます。ただし、同軸ケーブルと同様に損傷する可能性があるため、運用時には注意が必要です。コスト(初期コスト+保守コスト)
同軸ケーブルと比較した場合、光ケーブルは初期コストこそ高いものの、腐食や摩耗・損傷に強く、保守にかかる労力も少ないため、最終的な投資回収効率はあまり変わりません。しかも、信号品質が高い光伝送であれば、ダウンタイムも最小限に抑えられます。柔軟性&拡張性
CoaXPress-over-Fiberビジョンシステムは、要件に応じて柔軟な拡張と調整が可能です。カメラを追加する場合や、データ転送距離を延長する場合でも、既存の設備を交換する必要はありません。産業用途における信頼性
光伝送は、EMIやRFIの影響を受けにくいだけでなく、湿度・温度などの環境変化にも強いため、高精度かつ一貫した画像データ転送が可能です。持ち運びやすさ
光ファイバー製品は、軽量で持ち運びやすく、システムコストの削減にもつながります。

CoaXPress-over-Fiberのレイテンシー&信号品質
光伝送を行うCoaXPress-over-Fiberは、信号ロスが極めて少なく、EMIの影響も受けにくいため、データ転送距離にかかわらず、レイテンシーを抑えながら、一貫した信号品質を実現できます。また、電気伝送と異なり、画質や速度低下の原因となる信号の反射・減衰・遅延がほぼないため、数百mのケーブルを使用する場合でも、信号劣化の少ない安定したデータ転送が可能です。
インライン検査、ロボット制御、ピックアンドプレースをはじめ、リアルタイム性が求められる用途において、低レイテンシーは欠かせない要件です。レイテンシーを最小限に抑えれば、カメラとホストPCの距離が離れている複雑なシステムにおいても、画像データを正確かつ迅速に転送することができます。
光伝送 vs 電気伝送:主な用途とインターフェース選定のポイント
以下では、CoaXPress-over-Fiber(光伝送)が推奨される用途、CoaXPress(電気伝送)で十分な用途について、インターフェース選定のポイントとともに解説します。

CoaXPress-over-Fiberの主な用途
カメラとホストPCの距離が離れている場合、高速データ転送が求められる場合は、伝送損失が少なく、EMIの影響も受けにくいCoaXPress-over-Fiber(光伝送)がおすすめです。主な用途には、大規模製造、交通監視、医用イメージング、マルチカメラ撮影などがあります。また、CoaXPress-over-Fiberは柔軟性が高いため、将来的な設備拡張にも対応できます。
事例紹介:FPGAとCPU/GPUによる処理の分散と撮像の効率化
TDIラインスキャンカメラは、大容量の画像データを生成するため、最大帯域幅100Gbpsを誇るCoaXPress-over-Fiberが最適です。特にプロセッサーが分散して配置されている大規模製造施設の場合、CoaXPress-over-Fiberを導入することで、帯域幅を維持したまま、複数のフレームグラバーを運用できます。
TDIラインスキャンシステムの代表的なシステム構造と撮像フローは、以下の通りです。
一般的なシステムで使用されるCPU/GPUの代わりに、フレームグラバーのFGPA上でフラットフィールド補正(FFC)などの画像補正を実施
補正済みの画像をホストPCへ転送し、CPU/GPU上で識別や欠陥検出などの画像解析を実施
本システムの特長は、処理の分散によって撮像を効率化している点にあり、FPGA上で画像補正とセグメンテーションを実施することで、ホストPCのCPU/GPUにかかる負荷を大幅に低減しています。また、コスト面にも優れており、標準的なPCとミドルエンドのGPU/CPUで画像解析を行うため、高性能なフレームグラバーの導入コストを相殺することが可能です。
上記の構造を採用すれば、CoaXPress-over-Fiberの性能を最大限に活かしながら、高速・高精度のビジョンシステムを低コストで構築できます。

CoaXPressの主な用途
CoaXPress(電気伝送)は、短距離データ転送向けのコンパクトなシステムに最適です。カメラとフレームグラバーの距離が12~20m程度であればCXP-12、40m程度であればCXP-6を選択することで、帯域幅の低下やノイズの影響を防止できます。このほか、初期コストが低くて接続が簡単であることも、CoaXPressの大きな特長です。
技術的な観点から見ると、長距離・高速データ転送を行う場合や、高いノイズ耐性が求められる場合はCoaXPress-over-Fiber(光伝送)、短距離データ転送を行う場合や、コンパクトなシステムが求められる場合はCoaXPress(電気伝送)がおすすめです。個別にご相談いただければ、用途に応じて最適なインターフェースをご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

CoaXPress-over-Fiberに関するお問い合わせ
お問い合わせはこちらCoaXPressの今後の展望
CoaXPressは、今後数年にわたってさまざまな技術的改良が予定されており、ビジョンシステムのさらなる性能向上に貢献することが期待されています。
継続的な進化と投資回収効率の向上に取り組むとともに、技術的改良も進んでいることから、マシンビジョンの発展を支える高性能インターフェースとして、要件の厳しい用途を中心にCoaXPressへの注目が高まっています。
1. 帯域幅の拡張&次世代規格の開発
カメラの高速化・高画素化に対応するため、1チャンネル当たりの帯域幅をさらに拡張する次世代規格(CoaXPress 3.0以降)の開発が進められています。
2. 光伝送の普及拡大
CoaXPress-over-Fiberビジョンシステムの普及に伴い、光伝送に特化したカメラやフレームグラバーが増加し、設計や接続の柔軟性が高まることで、さらに導入しやすくなることが予想されます。
3. 同期・トリガー機能の改良
CoaXPressの次世代規格では、マルチカメラシステムや高速インライン検査で重視される同期・トリガーのリアルタイム性がさらに向上する予定です。
4. 小型化&省電力化
設置スペースが限られているシステムや、長時間の運用が求められるシステム向けに、CoaXPress機器の小型化と省電力化が進められています。
5. 対応ソフトウェアの拡充
pylon Software Suiteや付属ツールをはじめ、対応ソフトウェアの拡充によって自動設定、自己診断、スマートなエラー検出が可能になるなど、CoaXPress機器の操作性・機能性が向上しています。
6. 標準化&相互運用性の向上
CoaXPress-over-Fiberの標準化が進み、各メーカー製品間の相互運用性が確保されれば、投資回収効率の向上とさらなる普及拡大が期待されます。
よくあるご質問(FAQ)
従来のCoaXPress(電気伝送)と比較した場合、CoaXPress-over-Fiber(光伝送)は、データ転送の速度・距離が大幅に向上しています。また、光ケーブルは同軸ケーブルより軽量で細く、接続が非常に簡単です。さらに、CoaXPress-over-FiberはEMIの影響を受けにくく、安定した信号品質を維持したまま、数百mの長距離データ転送を行うことができるため、将来的に設備拡張が必要になった場合でも、マシンビジョンカメラを柔軟に追加できます。
使用機器や光ケーブルの品質にもよりますが、CoaXPress-over-Fiberを導入すれば、数百mから数kmの長距離データ転送が可能になります。これに対し、同軸ケーブルの最大ケーブル長は40mしかありません。そのため、大規模製造施設をはじめ、カメラとホストPCの距離が離れている場合は、CoaXPress-over-Fiberを選択するとよいでしょう。
CoaXPress-over-Fiberは、CoaXPressの拡張規格であるため、既存のカメラやフレームグラバーが光伝送に対応していれば、ソフトウェアを調整することで素早く簡単に移行できます。なお、BaslerのフレームグラバーSDK、pylon Software Suiteと付属ツール(pylon画像処理ツール、pylon AI画像解析ツール)は、CoaXPress-over-Fiberに対応しているため、制御やセットアップをスムーズに行うことが可能です。機器の選定に関してご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
CoaXPressとCoaXPress-over-Fiberは、同じ通信規格をベースにしているため、一般的に移行作業は簡単です。光ケーブル、光トランシーバーに加え、光伝送に対応したカメラとフレームグラバーを用意することで、既存のシステム構造をそのまま維持できます。さらに、電気伝送と光伝送の両方に対応しているpylon Software Suiteも活用すれば、移行時の接続とセットアップをスムーズに行うことが可能です。