AIビジョンシステム
フレームグラバーとFPGAによる処理能力の向上
カメラの高画素化とニューラルネットワークの複雑化に伴い、画像処理の効率化が求められるなか、AIビジョンシステムの運用において、膨大なデータをリアルタイムに処理することが大きな課題となっています。以下では、柔軟な前処理が可能なFPGA搭載フレームグラバーを活用し、AIビジョンシステムの処理負荷を軽減することで、製造現場で求められる性能・安定性・拡張性を確保する方法について解説します。
読了時間:約 26 分
AIビジョンシステムの処理能力の向上について知っておくべきこと
システム性能の最大化:フレームグラバーのFPGA上で画像を前処理することで、複数のカメラによる高解像度撮影においても、安定したフレームレートを実現
CPU/GPU負荷の軽減:一般的な画像処理をフレームグラバーに分散することで、高度なAIモデルの運用に必要なリソースを確保
長期的なコスト削減:ハードウェアの性能・保守要件を緩和しながら、システムの拡張性を向上させることで、全体的な運用コストを最大80%削減
省電力:CPU/GPUより消費電力が大幅に少ないFPGAを採用することで、運用時の冷却・電力要件を緩和
簡単導入:豊富な事例を参考にしながら、オープンAPIと柔軟な開発ツールを組み合わせることで、既存システムにフレームグラバーをスムーズに導入
処理の分散による性能の最大化
カメラの高画素化に伴い、データ量と必要帯域幅が増大するなか、高速データ転送と高度なAI処理に対応した産業用AIビジョンシステムが求められています。しかし、複数のカメラやディープラーニングモデルを運用する場合、性能・処理速度に制約があるCPU/GPUでは、全面検査やリアルタイムなフィードバックに対応できない可能性があります。
従来のフレームグラバーは、画像をそのまま取り込んで転送するため、CPU/GPU負荷の軽減にはつながりません。
そのため、データ転送速度、画像の解像度、並列処理数が一定の水準を超えると、処理速度が低下するだけでなく、システム性能も不安定になります。
これらの問題を解決するには、フレームグラバー上で画像を前処理するとよいでしょう。
ソリューション:FPGA搭載プログラマブルフレームグラバーによる画像の前処理
Baslerでは、画像処理機能を内蔵したFPGA搭載プログラマブルフレームグラバーを活用し、ハードウェア上で高負荷な処理を行うソリューションをご提供しています。主な画像処理機能には、色空間変換、HDR(ハイダイナミックレンジ)撮像、歪み補正、画素欠陥補正、シェーディング補正、LUT(ルックアップテーブル)処理などがあります。また、レイテンシーを抑えた並列処理も可能で、CPU/GPU負荷が大幅に減少するため、AI推論や高度な画像解析にリソースを集中させることができます。
メリット
レイテンシーを大幅に抑えながら、安定かつ一貫した撮像を実現
データ転送速度の向上やカメラ台数の増加に必要な拡張性を確保
FPGAとVisualAppletsを活用し、将来的な変更にも対応
アプローチ
システム性能を向上させるには、処理の分散が必要不可欠です。
FPGA搭載フレームグラバー:画像の前処理
CPU:機器制御、特殊な処理
GPU:AI推論
画像データの容量にかかわらず、CPU/GPUでは、特殊な処理や複雑な処理のみを担当します。このようにして処理を最適に分散すれば、製造現場の厳しい速度要件や品質基準を満たしながら、将来的な変更にも対応した高性能なAIビジョンシステムを構築できます。

データ削減による画像処理の効率化
画像処理の一環として、事前に画像データクレンジングや画像データ削減を実施すれば、膨大なデータを扱いやすい容量まで軽くすることができます。
データ削減システムの詳細はこちら画像の前処理によってCPU/GPU負荷を低減するフレームグラバーと、プログラム可能な論理回路を持つFPGAを組み合わせ、画像データを最適な形式で並列処理すれば、ニューラルネットワークの効率的な運用が可能になるだけでなく、システム全体の性能向上やレイテンシーの低減、安定かつ一貫した撮像にもつながります。
フレームグラバーとFPGAを導入するメリット
フレームグラバーとFPGAを導入するメリットは、システム性能の向上だけにとどまりません。ハードウェア要件の緩和や消費電力の節約、拡張性の向上により、システム全体の導入・運用コストも削減できます。

ビジョンシステムにおける画像の前処理
画像の前処理には、要件に合った画像データの最適化、ホストPCにかかる負荷の軽減、画質向上、撮像の効率化といったメリットがあります。詳しい手法や用途については、Vision Campusの記事をご覧ください。
記事を読むCPU/GPUの特長と用途
まとめ
CPU:少数の高性能なコアから構成されており、汎用性と柔軟性が高いため、一般的な処理や複雑な個別処理に最適
GPU:多数のシンプルなコアから構成されており、膨大なデータの並列処理が可能であるため、画像処理やグラフィックス処理、AI処理に最適
AIビジョンシステムを構築する際は、上記を考慮したうえで、複雑な制御・管理をCPU、高負荷な並列処理をGPUに割り当てるとよいでしょう。
FPGA搭載フレームグラバー:ハードウェアアクセラレーション&システムインテグレーション
CPU/GPU負荷の軽減による処理速度の向上:最先端のFPGA搭載フレームグラバーを活用し、ハードウェア上で画像を前処理すれば、最適化された画像データのみがCPU/GPUに転送されるため、複数のカメラを高フレームレートで運用する場合でも、ホストPCへの負荷を抑えながら、安定した撮像を実現できます。
技術的メリット
フレームグラバー上で画像を前処理することで、最適化された低容量の画像データのみがCPU/GPUに転送されます。また、シェーディング補正などの高負荷な処理に加え、その他アルゴリズムの運用もフレームグラバーが行うため、明るさ・色合い・コントラストを瞬時に調整しながら、CPU/GPUのリソースをAI推論や複雑な画像解析に優先的に割り当てられます。
システムインテグレーション
既存の製造設備にビジョンシステムを導入する際は、画像処理のハードウェアアクセラレーションを実現するため、充実したドキュメントを備えたオープンAPIと高性能な開発ツールが欠かせません。また、安定したデータ転送と高精度な同期(マルチカメラシステムの場合)を可能にしながら、高フレームレートにおける撮像の信頼性を向上させるには、フレームグラバーを適切に設定する必要もあります。
まとめ
FPGA搭載フレームグラバーによるハードウェアアクセラレーションは、AIビジョンシステムの性能・安定性・拡張性を向上させるうえで非常に重要です。ハードウェア側で画像の前処理、ソフトウェア側でAI推論を実施し、両者の役割を明確に分離すれば、システムの処理能力を最大限に引き出すことができます。
効率的なデータ転送を支えるインターフェースと帯域幅
AIビジョンシステムに使用するインターフェース(CoaXPress、Camera Link、GigE Visionなど)は、処理速度やデータ品質、レイテンシーを大きく左右します。インターフェースの選定においては、公称帯域幅だけでなく、フレームグラバーが実際に利用できる帯域幅を確認することも非常に重要です。
考慮すべきポイント
ハードウェア設計:インターフェースの帯域幅を最大限に活用するには、内部信号処理、バッファ構造、ホストPCへのデータ転送速度などを考慮したうえで、最適な設計のフレームグラバーを選定する必要があります。
データ転送制御&バッファ管理:高品質なフレームグラバーは、DMAなどによる効率的なデータ転送制御とバッファ管理により、画像データを最小限のレイテンシーでロスなく転送できます。特に高フレームレート下では、データ転送制御とバッファ管理の不備がデータ滞留やデータロスにつながります。
同期&トリガー制御:複数のカメラを運用する場合、高精度な同期とトリガー制御は欠かせません。撮像タイミングがずれると、画像歪みやパケットロス、レイテンシーのバラつきが発生します。
柔軟性:最先端のフレームグラバーは、カメラ種別・画像形式・トリガー要件にかかわらず、安定かつ一貫したデータ転送が可能であるため、導入がしやすいだけでなく、システムの安定性も向上します。
不適切なハードウェア/ソフトウェアを使用するリスク
データ転送制御やバッファ管理の不備による画像データのロス・破損
非効率なロジックやプログラムの自由度が低いドライバーによるレイテンシーの増大、フレームレートの低下(リアルタイムな処理が求められる用途において特に重要)
PCIeカード、OS、AIアクセラレーターなどの不安定化、互換性問題の発生
システム変更時(カメラの追加、解像度・フレームレートの向上など)における拡張性の不足
まとめ
AIビジョンシステムの性能は、インターフェースだけでなく、使用するフレームグラバーやソフトウェアの品質によっても変わります。ハードウェア、バッファ管理、同期、ドライバーなどの要素をシームレスに連携すれば、システムの安定性・信頼性・処理能力を向上させながら、データ量の増大にも柔軟に対応することができます。
システムインテグレーション、互換性、ソフトウェア
既存のハードウェア・ソフトウェアとのシームレスな統合は、フレームグラバーを効果的に運用するうえで非常に重要です。また、個別の画像処理に適した方法でハードウェアアクセラレーションを実現するには、充実したドキュメントを備えたオープンAPIと高性能な開発ツールも欠かせません。これらをすべて揃えれば、使用環境(Windows、Linux、その他組み込みOS)にかかわらず、システムの調整・更新・拡張をスムーズに行うことができます。
従来のフレームグラバーとFPGA搭載プログラマブルフレームグラバーの比較
AIビジョンシステムにおいて、従来のフレームグラバーとFPGA搭載プログラマブルフレームグラバーのどちらを採用するかは、実際の用途やデータ転送速度、前処理の複雑性によって異なります。
従来のフレームグラバー:RAW画像をCPU/GPUに迅速かつ安定して転送したい場合におすすめです。自由にプログラム可能な論理回路を備えておらず、ハードウェア機能も限られているため、同期やトリガー制御、特殊な前処理は難しいですが、リアルタイム性よりシンプルさ・安定性が重視されるシステムには十分といえます。
FPGA搭載プログラマブルフレームグラバー:AIによるインライン検査、複雑な製造管理をはじめ、大容量のデータをリアルタイムに処理する用途におすすめです。フレームグラバー上で画像を前処理することで、CPU/GPU負荷を抑えながら、要件の変化にも柔軟に対応できます。また、処理能力と拡張性に優れたFPGAを搭載しているため、複数のカメラの運用や解像度の向上、レイテンシーの低減が求められる場合に特に適しています。
まとめ
拡張性や長期的な性能・柔軟性をはじめ、厳しい要件を満たすAIビジョンシステムを構築するには、オープンなソフトウェアインターフェースとFPGA搭載プログラマブルフレームグラバーが欠かせません。フレームグラバーの選定やFPGAプログラミングに関してご不明点があれば、お気軽にご相談ください。
フレームグラバー&FPGAプログラミングの詳細はこちらFPGA:AIビジョンの性能向上に最適
自由にプログラム可能な論理回路を備え、大規模な並列処理が可能なFPGAは、フレームグラバーによる画像の前処理に最適です。
主な画像処理機能
エッジフィルター、シャープネスフィルター、メディアンフィルター
LUTによる色・コントラスト調整
高速補正(画素欠陥補正、シェーディング補正、HDR撮像、ブロブ検出、歪み補正、JPEG圧縮、深度推定、構造化光処理など)
トリガー制御、画像解析
開発の効率化:HLSツール&VisualApplets
HLS(高位合成)ツールの登場により、CやC++など抽象度の高い言語による開発作業を効率化できるようになりました。しかし、FPGA設計を最適化するには、ハードウェアに関する専門知識が必要です。

Baslerでは、開発のさらなる効率化をサポートするため、専門知識がなくても高度な画像処理機能をノーコードでFPGAに実装できるVisualAppletsをご提供しています。VisualAppletsを使用すれば、画面上で必要な画像処理機能を作成するだけで、最適な論理回路が自動的に生成されます。しかも、煩雑なビット解析の代わりに、画像ベースのシミュレーションを採用しており、要件を満たしているかを瞬時に判断できるため、開発にかかる労力と時間を抑えながら、画像処理のハードウェアアクセラレーションを簡単に実現できます。
AIビジョンシステムにFPGAを導入するメリット
大容量の画像データを最小限のレイテンシーで並列処理
再プログラムにより、要件やアルゴリズムの変更に柔軟に対応
AI推論によるインライン検査、複数のカメラの運用、高速撮影が求められる用途のCPU/GPU負荷を軽減
量子化や畳み込み層の最適化をはじめ、ハードウェアに合わせてAIモデルを調整し、FPGAに適切に実装することで、AIモデルの性能を最大化
一般的なAI処理(分類、物体認識など)や高度な画像処理において、レイテンシーを抑えながら、性能を大幅に向上
まとめ
AIを利用した製造設備において、高い処理能力、低レイテンシー、将来的な変更への対応が求められる場合は、FPGAを導入することをおすすめします。初期コストは高いものの、省電力、高性能かつ柔軟性に優れているため、長期的なコスト削減と競争力向上が期待できます。
フレームグラバーとFPGAのシナジー効果
フレームグラバーとFPGAのシナジー効果を活かし、フレームグラバーで画像データを取得・転送し、FPGAで高負荷な処理を行えば、CPU/GPU負荷とレイテンシーが抑えられるだけでなく、画像処理の効率化と柔軟性向上にもつながります。
フレームグラバーとFPGAを組み合わせるメリット
撮像工程の上流側でデータ容量とデータ転送時間を削減
フレームグラバーを活用して安定した画像処理フローを構築することで、リアルタイムなAI解析を実現
レイテンシーを抑えながら、ホストPCにかかる負荷も軽減
優れた柔軟性と拡張性により、システム要件の変更(カメラの追加、画素数の向上)に対応
アプローチ
フレームグラバーとFPGAの組み合わせは、ロボット作業、AI検査、インラインの品質管理をはじめ、リアルタイム性が重視される用途に適しており、高フレームレートや複雑な検査が求められる厳しい製造条件においても、レイテンシーを抑えたシームレスなデータ転送と、安定かつ一貫した撮像を実現できます。
事例紹介
電子機器の製造におけるインラインの品質管理
プリント基板(PCB)検査を自動化するなら、高画素カメラとBaslerフレームグラバーの組み合わせがおすすめです。フレームグラバーに搭載されたFPGAには、以下のような役割があります。

画像の前処理(画素欠陥補正、色空間変換、マルチROI抽出)
微細欠陥(はんだ不良、部品不足、ショートなど)のリアルタイムな検出
CPU負荷の軽減(機器制御にリソースを集中)
GPU負荷の軽減(AI分類にリソースを集中)
メリット
高スループットや製品種別の変更が求められる場合でも、レイテンシーを抑えたリアルタイムな検査が可能
バッテリーの製造における品質管理
バッテリーの電極塗工では、毎秒80mの製造速度を維持したまま、金属箔を広範囲にわたって鮮明に撮像しなければなりません。Baslerラインスキャンカメラで塗工面の画像を取得したうえで、フレームグラバーのFPGA上で前処理を行えば、後続の解析に必要なデータ量が大幅に抑えられるため、欠陥の検出精度が向上します。
FPGA搭載フレームグラバーの役割
ROI抽出&前処理:異常がある画像領域のみを抽出
データ削減:必要な画像領域のみを転送
安定した画像処理:製造速度を維持したまま、サイクルタイムのバラつきを低減
GPUの役割
AI分類:ダマ、ひび割れ、異物、ボイドなどの欠陥の検出
AI測定:ROI内の欠陥の大きさ・面積の測定
AI良否判定:指定した方法による欠陥の分析・排除
メリット
データ容量の大幅な削減、欠陥の正確な検出、材料ロスの最小化により、製造速度を維持したまま、品質管理の信頼性を向上
飲料缶の外観検査
飲料缶の高速製造ラインにFPGA搭載フレームグラバーを導入すれば、大量の飲料缶画像をリアルタイムに解析できます。

検査項目
異物検出:混入物の正確な特定
色・形状検査:製品の一貫性の確保
表面検査:欠陥やバラつきの検出
FPGA搭載フレームグラバーの役割
マルチROI抽出&HDR撮像:環境変化に応じた画質補正
データ削減:AI推論に必要な特徴・画像領域の抽出
処理負荷の最小化:CPU/GPU負荷の大幅な軽減
メリット
スループットを低下させることなく、高速製造ラインでシームレスな品質管理を実現
フレームグラバー、ソフトウェア、その他サービスの一覧
よくあるご質問
画像処理に不具合がある場合(高レイテンシー、複数のカメラの運用によるフレームレートの低下など)や、CPU/GPUの使用率、フィードバック制御の速度、拡張性(解像度の向上、カメラの追加など)に問題がある場合は、FPGA搭載フレームグラバーを導入するとよいでしょう。
画素欠陥補正、色空間変換、LUT処理、シェーディング補正、マルチROI抽出、HDR撮像、同期・トリガー制御をはじめ、並列処理と高速データ転送が求められる画像処理に適しています。
充実したドキュメントを備えたオープンAPIがあれば、フレームグラバーの導入は非常に簡単できます。ただし、データフローやトリガー要件に基づき、既存ソフトウェアを調整できるかを確認する必要があります。
マルチカメラシステムのトリガー制御、バッファ管理、カメラとの互換性、FPGAプログラミングに問題が発生する可能性があるため、フレームグラバーのメーカーにお問い合わせのうえ、徹底した試験を実施することをおすすめします。
FPGA搭載フレームグラバーの導入前後における画像処理の速度、レイテンシー、消費電力、サーバー/GPUの数、ダウンタイム、保守コスト、要件変更への対応力を比較するとよいでしょう。
FPGA搭載フレームグラバーに画像処理機能を実装する際は、画面上で必要な機能を作成し、フレームグラバーに直接実装できるVisualAppletsを使用することをおすすめします。Baslerでは、個別の開発サポートからフルカスタマイズの請負に至るまで、要件に応じてさまざまなサービスをご提供しています。VisualAppletsと関連サービスの詳細については、こちらをご覧ください。

