ドイツ高速鉄道ICE向け車両検査システム「E-Check」
Basler ace 2、モバイルロボット、AIによる保守作業の半自動化
- 顧客
- Deutsche Bahn AG
- 所在地
- ドイツ・ケルン
- 日付
- 2023年11月
概要
今後数年の間に長距離旅客輸送量を2020年比で倍増させるという目標を掲げているDeutsche Bahn社(ドイツ国鉄)では、増大する保守作業に対応するため、自動化装置をはじめとする設備投資の拡大や人材育成の強化が求められています。 これに伴い、ドイツ高速鉄道InterCity Express(ICE)の取組みとして、さまざまな車種に対応した半自動式の車両検査システム「E-Check」の開発プロジェクトが始動しました。同システムは、ケルン・ニッペスの整備工場にすでに導入されているほか、2025年までにベルリン、ドルトムント、ハンブルク、ミュンヘンの整備工場でも運用が開始される予定で、以下のような効果が期待されています。
運行可能な車両数の増加
保守計画の最適化
保守作業の省力化
課題
さまざまな装置から構成されている鉄道車両に対し、欠陥検査や保守点検を行うには、非常に複雑かつ高度な技術が必要になります。特に画像処理においては、以下のような要件が求められました。
32台のカメラの同期と大量データの転送
厳しい照明条件下での撮影
急激な環境変化への対応
迅速かつ正確なピント調整
上記を満たすには、高性能なハードウェアを準備するだけでなく、実証試験やソフトウェアパイプラインを利用しながら、人間と同等の検査精度と安全性を有する高度なAIモデルも構築しなければならないなど、膨大なコストがかかります。そのため、今回のシステムでは、AIと人間の協働により保守作業を効率化させる半自動式が採用されました。
ソリューション
E-Checkの開発プロジェクトには、Baslerのほか、Gestalt Robotics社(ソフトウェア&センサー関連企業)、Strama-MPS社(機器開発&インテグレーション関連企業)、Götting社(無人搬送車関連企業)、infraView社(IT関連企業)が参加しており、Gestalt Robotics社とinfraView社は、構造物の分析に特化した外観検査向けAIモデルの構築を担当しました。
E-checkは、車両撮影用のカメラゲート、可動式の床下点検車(オプション)、台車検査のサポートや給排水の管理を行うモバイルロボットから構成されています。
そのうち、カメラゲートにはBasler ace 2が32台設置されており、a2A5328-4gcPROゲートをゆっくりと通過する車両全体を正確に捉えながら、カメラ1台ごとに毎秒2枚の速度で高解像度画像を取得します。なお、撮影範囲外の部分については、モバイルロボット(2本のアームにBasler ace 2 a2A5328-4gcPRO を各1台搭載)が補助を行います。
カメラで取得したデータは、Gestalt Robotics社製ミドルウェア「AutomateOS」によって処理された後、AIが不具合や欠陥(ネジの緩み・脱落、摩耗・亀裂、バラストの飛散に起因する安全性にかかわる損傷など)がないかを分析します。
なお、AIの分析結果に対しては、人間が適宜モニタリングを行いながら、修正や調整を加えることも可能です。また、ソフトウェアにはプロセスプランナーが含まれているため、システム全体の動きを制御しながら、すべての処理データを安全かつ透明性の高い形式でデータベースに保存できます。
このほか、2本のアームを搭載したモバイルロボットについては、人間による保守作業のサポートや、タンク設備の給排水にも使用されます。
メリット
システムをクラウドに接続することなく、大量データをエッジ側で処理
簡単便利なpylon Software Suiteがスムーズなカメラ設定とピント合わせをサポート
複雑な欠陥を可視化することで検査効率を向上
高解像度画像により摩耗状態を正確に評価
高速データ転送対応のGigEを採用し、システム全体の性能を向上
使用製品
ご紹介したソリューションの導入には、以下の製品が最適です。
詳細情報
E-Checkの開発準備の様子や、検出可能な不具合・欠陥について紹介しているGestalt Robotics社のビデオ