SWIRカメラの仕組みと用途
「見えない」を「見える」に
マルチスペクトルとSWIR
このウェビナーでは、以下のトピックを中心に、マルチスペクトルイメージングとSWIR撮影に関するさまざまな疑問にお答えしています。
マルチスペクトルとSWIRの定義
マルチスペクトルとSWIRの用途
マルチスペクトルとSWIRのメリット&デメリット
活用事例
今後の展望
SWIR光の定義
可視光帯域(400~800nm)より波長が長い光のうち、900~2500nmの波長帯域の光はSWIR(短波長赤外)光と呼ばれており、人間の目には見えません。
SWIR光の特性
可視光と同様に、SWIR光も物質によって光子の反射・吸収・透過の仕方が異なるため、カメラで撮影した時にコントラストの違いが生まれます。
例えば、樹脂は可視光を反射する一方で、1100nmより波長が長い光は透過します。同様に、色付きガラスや一部のプラスチック、煙もSWIR光を透過します。また、逆にSWIR光を吸収する物質も存在しています。
このようにSWIR光の特性を利用すれば、塩と砂糖、水とイソプロピルアルコール、種類の異なるプラスチックを含め、肉眼ではわからない物質の違いを識別できます。
SWIRカメラによる温度検知
SWIRカメラは、温度の違いも検知できます。140°Cを超える物質はSWIR光を発しており、SWIRカメラで撮影すると、温度が高いほど明るく映ります。この特性を利用すれば、従来の測定手法では不可能であった非接触による正確かつ安全な温度監視が可能になるため、原材料や製品の生産ラインを中心に、さまざまな工程管理において大きなメリットがあります。
SWIRビジョンシステム
SWIRビジョンシステムを構築するには、それぞれの用途に求められる撮影要件を理解したうえで、SWIR帯域に対応したカメラ、アクセサリーを適切に組み合わせる必要があります。
SWIRカメラ
一般的なシリコンセンサーは、1000nm以上の波長の光を捉えられません。そのため、SWIR撮影では、SWIR帯域に高い感度を持つInGaAs(ヒ化インジウムガリウム)センサーが一般的に使用されています。
Baslerが新たに開発したace 2 X visSWIRは、従来のシリコンセンサーを搭載したカメラ(400~1000nm)とSWIRカメラ(900~1700nm)の両方の波長帯域に対応しており、1台のカメラで400~1700nmの広帯域の撮像が可能です。
SWIRレンズ
SWIR帯域の撮影を行うには、赤外光をカットする可視光レンズではなく、可視光をカットするSWIRレンズが必要です。しかし、波長の違いによってレンズを通過する時の回折光の光路に微妙な違いが生じることから、SWIRレンズのように広帯域に対応した特殊なレンズは、ピント位置がずれるフォーカスシフトという現象が発生します。鮮明な画像を撮影するには正確なピント合わせが欠かせないため、フォーカスシフト補正ありの高価なSWIRレンズも存在しますが、対象となる波長帯域が限られている場合は、フォーカスシフトなしの安価なSWIRレンズを選ぶとよいでしょう。
SWIRフィルター
光学フィルターは、特定波長以外の光を除外することを目的として、多くの用途に使用されています。特に、コントラストの違いを強調しながら、対象物の特徴を可視化しなければならないSWIR撮影では、周辺光をコントロールするための光学フィルターが非常に重要になります。
SWIR照明
屋内撮影向けの一般的なLED照明は、SWIR帯域の光を含みません。 SWIR照明 そのため、1000nm以上の波長帯域における撮影では、広帯域に対応したハロゲンランプや特定波長の光のみを発する特殊なLED照明が必要になります。
また、波長の異なるLED照明を光源として使用すれば、機械的なフィルター交換を行わなくても、複数の波長帯域の撮影を行うことができます。ハロゲンランプと比べると、LED照明は高価であるものの、耐久性が高いため、産業用途には最適です。いずれにしても、用途に応じて最適な照明を選定するとよいでしょう。
SWIRカメラの用途
さまざまな業界で幅広く活用されているSWIRカメラ。その主な用途には、以下のようなものがあります。
Baslerでは、SWIR撮影に関する個別のご相談を承っています。用途に応じて最適なソリューションをご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
Basler ace 2 X visSWIRの仕組み
これまで、可視光帯域とSWIR帯域の撮影を行うには、センサーの異なる2台のカメラが必要でした。しかし、Basler ace 2 X visSWIRなら、1台のカメラで可視光からSWIR帯域までの高解像度撮影が可能です。
ソニー社製SenSWIR技術搭載センサー
SWIRカメラには、CMOSセンサーではなく、InGaAs(ヒ化インジウムガリウム)センサーや、CQD(コロイド量子ドット)センサーが搭載されています。ピクセルサイズが小さく、可視光帯域にも対応しているCQDセンサーと比較した場合、InGaAsセンサーは量子効率こそ高いものの、ピクセルサイズが大きく、SWIR帯域にしか対応していないという課題がありました。
この常識を打ち破ったのが、ソニー社製SenSWIR技術搭載センサーです。InP(インジウム・リン)層を薄膜化して可視光を透過することで、InGaAsセンサーとして高い量子効率を維持しながら、400~1700nmまでの広帯域の撮像が可能になっただけでなく、ソニー社の半導体製造技術を活用したCu-Cu接続によりピクセルサイズが小さくなった結果、検査や品質管理の多くの用途で高解像度撮影を行えるようになりました。
なお、ソニー社製SenSWIR技術搭載センサーは、モデルによってピクセルサイズが異なり、第1世代のIMX990(1.3MP)とIMX991(VGA)のピクセルサイズは5µm、Basler ace 2 X visSWIRにも採用されている第2世代のIMX992(5.3MP)とIMX993(3.2MP)のピクセルサイズは3.45µmとなっています。