TDIラインスキャンカメラ
用途、動作原理、メリット
複数のステージにわたって信号を積算する時間遅延積分方式により、画像のブレを抑えながら、明るさを向上させるTDIラインスキャンカメラは、ウエハー検査、半導体検査、自動外観検査(AOI)をはじめ、低照度下の動体撮影が求められる用途に広く導入されています。
TDIについて知っておくべきこと
低照度下の動体撮影においても、高精度な画像処理が可能
ノイズを抑えながら、優れた感度を実現
半導体検査、ディスプレイ検査、プリント基板検査など幅広い産業用途に最適
被写体の動きに合わせて、複数のステージにわたって信号を積算
最新のCMOS TDIセンサー:低ノイズ・省電力・高速であるものの、キャリブレーションがやや複雑
TDIラインスキャンカメラの用途
低照度下の動体撮影向けに開発されたTDIラインスキャンカメラは、被写体の動きに合わせて、複数のステージにわたって信号を積算する時間遅延積分方式を採用しています。ノイズを抑えながら、優れた感度を実現できるため、半導体検査、ディスプレイ検査、プリント基板(PCB)検査をはじめ、製造速度を維持しながら、高精度かつ信頼性の高い撮像が求められる用途に最適です。
TDIラインスキャンカメラと従来のラインスキャンカメラの違い
TDIラインスキャンカメラは、感度と速度の両面で従来のラインスキャンカメラより優れています。また、露光方法や信号処理にも違いがあり、被写体の動きに合わせて、複数のステージにわたって信号を積算するため、ノイズが減少し、光感度が向上します。
従来のラインスキャンカメラ | TDIラインスキャンカメラ | |
センサー構造 | シングルライン/マルチライン | 複数ステージ構造(最大ステージ数:256段) |
|---|---|---|
感度 | 単一ライン基準 | ステージ数(N)に比例して倍増 |
照度要件 | 単一露光であるため、高照度が必要 | 複数回の露光を行うため、低照度で十分 |
被写体の最大搬送速度 | 速度制限あり | 高速でも信号量の変化なし |
画像のブレ | 搬送速度が速すぎるとブレが発生 | 同一部位に対して複数回の露光を行うため、ブレが低減 |
導入コスト | 低い | 中程度~高い(システム構成によって異なる) |
TDIによる信号の増幅:積算処理の仕組みとメリット
最新のTDIラインスキャンカメラは、複数回の露光で得られた信号を積算することで、感度とダイナミックレンジを最大3倍まで向上させることが可能です。低照度下の信号品質を改善し、画像の明暗部を鮮明に可視化すれば、産業現場における検査の効率化と精度向上につながります。
STEP 1:撮影開始
被写体がTDIラインスキャンカメラの前に到達すると、まずセンサーの最初のステージにおいて、被写体からの反射光が電荷に変換され、ステージ内に蓄積されます。ステージ数はカメラによって異なりますが、一般的に16~256段まであり、ステージ数が多いほど、信号が増幅されて感度が向上します。
STEP 2:電荷の転送
被写体がさらに進むと、最初のステージで得られた電荷が次のステージへ転送されます。この処理は、読み出しが完了するまで続き、光量の積算によって信号が増幅するため、従来のラインスキャンカメラと比較して画像のSN比が大幅に改善します。
STEP 3:電荷の蓄積(積算)
電荷が次のステージに転送されると、被写体の同一部位に対して再度露光が行われ、最初のステージで得られた電荷と次のステージで得られた電荷が積算されます。このようにして、複数回の露光で得られた電荷を転送しながら蓄積することで、各画素の信号強度が向上していきます。
STEP 4:積算の繰り返し
積算を繰り返す回数は、TDIラインスキャンカメラのステージ数に比例します。なお、被写体の同一部位に対して複数回の露光を行いながら、センサーに沿って電荷を転送するため、被写体の搬送速度とラインレートを常に同期する必要があります。
STEP 4:画像生成
蓄積した電荷が最後のステージに転送されると、読み出し完了です。このようにして積算を繰り返しながら、各画素の信号強度を向上させれば、低照度下でも明暗部を鮮明に捉えた高感度かつ低ノイズの画像を生成できます。
TDIラインスキャンカメラの同期と露光管理
TDIラインスキャンカメラは、正確な同期と露光管理に加え、画像のブレを防止する複雑なキャリブレーションが求められます。カメラの動きと被写体の動きを合わせることで、撮像の一貫性が確保され、画質も向上します。
同期とキャリブレーション
被写体の搬送速度に合わせて撮影を行うには、正確なシステム制御と同期が欠かせません。Baslerのフレームグラバーには、エンコーダーの信号に基づき、TDIラインスキャンカメラのトリガー信号や開始/停止信号を制御するトリガー機能と同期機能が搭載されています。これらに加え、キャリブレーションと保守作業により、ドリフトやエンコーダーの誤差を補正すれば、一貫した画質を実現できます。
被写体の動きと撮像の制御
搬送速度にバラつきがある場合は、カメラの設定を動的に調整するとよいでしょう。被写体の動きに合わせて安定した撮像と正確な測定を行えば、レイテンシーを抑えながら、露光やピント合わせの精度を向上させることができます。
照明条件に左右されない鮮明な撮像
照明条件にかかわらず、鮮明な画像を撮影したい場合は、必要に応じて光源や赤外照明を追加し、コントラストを向上させながら、均一かつ十分な明るさを確保するとよいでしょう。その際、Gbps単位の広帯域幅とマイクロ秒から数ミリ秒レベルの低レイテンシーを誇るCoaXPress(CXP)を採用すれば、画像の解像度を維持したまま、リアルタイムなデータ転送を実現し、後続の解析作業をスムーズに進めることができます。
まとめ:TDIによる低照度下の画質向上
TDIラインスキャンカメラは、低照度下の動体撮影における画質向上に最適です。
用途:半導体検査、プリント基板検査、ディスプレイ検査など
従来のラインスキャンカメラとの違い:センサーのステージ数に応じて信号を積算することで、単一露光より感度とSN比を大幅に向上
撮像の仕組み:被写体の動きに合わせて、センサー上で被写体を読み出しながら、得られた電荷をステージからステージへ転送して蓄積
課題:ドリフトが発生しやすいため、キャリブレーションや安定した照明、被写体の動きとセンサーの読み出しタイミングの正確な同期が必要

Basler TDIビジョンソリューション
Baslerでは、お客様のご要望に基づき、優れた性能・信頼性・拡張性を備えた最先端のTDIビジョンソリューションをご提案しています。最大撮影速度を維持したまま、画像の明るさを大幅に向上させるracer 2 XL(ステージ数:256段)に加え、各種カスタマイズやサポートも充実しており、将来的な変更にも柔軟に対応することが可能です。
TDIラインスキャンカメラに関するよくあるご質問(FAQ)
TDIラインスキャンカメラは、被写体の動きに合わせて複数回の露光を行いながら、ステージ数に応じて信号を積算することで、低照度下の動体撮影において感度と画質を大幅に向上させることができます。
TDIラインスキャンカメラは、半導体検査、プリント基板検査、その他科学研究をはじめ、高速撮影が求められる用途に適しています。
TDIラインスキャンカメラは、被写体からの反射光を電荷に変換した後、ステージからステージへ電荷を転送しながら蓄積することで、全体の信号を大幅に増幅させることができます。
TDI撮影を行う際は、ブレのない鮮明な画像を生成するため、均一かつ安定した照明に加え、被写体の動きとセンサーの読み出しタイミングの正確な同期が必要です。
機械設計によるドリフトの防止、正確な速度制御、定期的なキャリブレーションが非常に重要です。また、画像データを効率的に転送するため、CoaXPressやCamera Linkといった高速インターフェースを導入する必要もあります。



