コンタクトレンズ検査のブリスターパック撮影におけるSWIRカメラの活用
使用者の安全と快適さを確保するため、厳格な品質管理が求められるコンタクトレンズ。以下では、可視光からSWIR(短波長赤外)帯域の撮像に対応したBasler ace 2 X visSWIRを活用し、透明なブリスターパックと生理食塩水のコントラストを強調することで、微細な亀裂・気泡・異物を迅速かつ正確に検出し、医薬品レベルの品質を実現する方法について解説します。

検査課題:透明素材の撮像
ブリスターパックに入ったコンタクトレンズの検査は、複数の透明素材(コンタクトレンズ、生理食塩水、気泡、プラスチックシートなど)を撮影しなければならないため、多くのメーカーにとって悩みの種となっています。しかも、これらの透明素材は、コントラストが低いだけでなく、予期せぬ反射光や散乱光を発生させるおそれもあり、従来の可視光カメラでは正確な検査ができません。

透明素材のコントラストの強調
可視光や近赤外光による撮影の場合、水、空気、プラスチックレンズの質感と明るさの違いがわかりません。なかでも、レンズ周辺部は背景と同化しやすく、輪郭や向きの把握が難しいため、照明やカメラの角度がわずかにずれるだけで、画像からレンズが完全に消えてしまいます。このようなコントラストの低さは、素材の識別を困難にしており、特に高速製造ラインにおいて検査の安定性低下の原因となります。
一方、水に吸収されやすいSWIR光による撮影の場合、レンズと生理食塩水の間のコントラストの違いが強調され、素材が識別しやすくなるため、撮影速度や照明環境の変化にかかわらず、レンズ周辺部を正確に可視化できます。
「見えない」を「見える」に
可視光カメラと近赤外カメラの波長帯域が400~1000nmであるのに対し、 SWIRカメラは400~1700nmの波長帯域に対応しているため、水やシリコンハイドロゲルなどの素材の違いがはっきりとわかります。また、一般的なカメラと異なり、透明性・反射性のある物体の表面下にある欠陥を可視化できることも、SWIRカメラの大きな特長です。このほか、水とプラスチックで吸収率が違うというSWIR光の特性を活かし、生理食塩水に満たされたブリスターパックを撮影すれば、自然とコントラストが強調されるため、複雑な照明機器がなくても、微細なキズ・亀裂・気泡を浮き上がらせることが可能です。このように、迅速な信号処理と反射面の光沢の低減により、鮮明かつ安定した撮像を実現するSWIRカメラは、コンタクトレンズの製造ラインにおけるリアルタイムかつ高精度な欠陥検出と、検査の効率化・スループット向上に最適であるといえるでしょう。

コンタクトレンズの外観検査において、コントラストの低い生理食塩水とブリスターパックを撮影し、微細なキズなどの隠れた欠陥を検出することは決して簡単ではありません。Baslerでは、検査精度・速度の向上とスムーズな装置開発をサポートするため、カメラ、レンズ、照明の試験をはじめ、SWIR撮影に関するさまざまなご相談を承っています。
ace 2 X visSWIR 製品一覧
カメラの選定やシステム構築には、ビジョンシステムコンフィギュレーターが便利です。
