産業用画像処理における中心検出アルゴリズムの活用
産業用画像処理において、対象物の位置情報のみが必要であるにもかかわらず、画像データをそのままホスト側に転送すると、時間と帯域幅のムダにつながります。以下では、カメラのFPGA上で中心検出アルゴリズムを運用し、中心座標をセンサーレベルでリアルタイムに特定することで、照明条件や撮影環境にかかわらず、データのやり取りによるレイテンシーを低減し、システムの安定性を確保する方法について解説します。

中心検出アルゴリズムの用途
外観検査装置や産業用ロボットをはじめ、カメラを介してナビゲーションを行うシステムにとって、正確な位置情報は欠かせません。しかし、実は画像データをホスト側のコントローラーに転送しなくも、正確な位置情報を取得することは可能です。Baslerの中心検出アルゴリズムは、対象物の歪みやずれにかかわらず、複雑な画像データから必要な情報のみを安定して抽出できるなど、一貫した再現性、サブピクセル単位の精度、低レイテンシーが求められる用途に最適です。
正確な中心検出による製造現場の技術的課題への対応
ホストコンピューター上で中心検出アルゴリズムを運用する場合、試験段階では問題がなくても、製造現場においてさまざまな技術的課題に直面するおそれがあります。一方、カメラのFPGA上で中心検出アルゴリズムを運用すれば、ノイズやOSジッター、データ転送の負荷を軽減しながら、サブピクセル単位の精度とリアルタイムな同期を実現できます。

製造現場におけるサブピクセル単位の精度と安定性の確保
対象物の中心座標の特定は、一見すると簡単そうですが、サブピクセル単位の精度と優れた再現性・安定性
ノイズや照明ムラによる輝度の重みのバラつき(ROI領域周辺のエッジ部など)
検出対象ピクセルに対する二値化とセグメンテーションの影響
非ガウス領域やブロブの重複領域における輝度分布のバラつき
カメラの非線形応答や8ビット量子化による重み付け平均の誤差
上記の課題を解決するには、高度なフィルター処理に加え、適応的二値化や局所回帰を行わなければなりません。Baslerの中心検出アルゴリズムは、カメラ内部でフレームごとに同様のロジックを実行するため、処理負荷の増大とレイテンシーを防止しながら、バラつきのない一貫した解析結果が得られます。
リアルタイムな同期&シンプルなシステム構築
ホストコンピューター上で中心検出を行うと、OSジッター、データ転送の負荷、複雑な同期により、リアルタイムな位置合わせや動作制御が難しくなります。
中心検出アルゴリズムをカメラのFPGAに実装し、カメラ側で画像処理とタイムスタンプの付与を行えば、マイクロ秒レベルの正確な同期が可能になるだけでなく、データ容量の小さい座標情報(X、Y、θ、品質など)のみを転送するため、ホスト側の負荷が減少し、システム全体の安定性と性能が向上します。
また、このようなハードウェアアクセラレーションは、ソフトウェアへの依存度と保守労力の軽減にも効果的で、撮影環境にかかわらず、リアルタイムかつ一貫した処理を実現できます。
お問い合わせはこちらカメラ側で代替できる処理は決して少なくありません。例えば、多くのお客様は産業用カメラで撮影を行った後、外部のソフトウェアで中心検出を行いますが、中心検出アルゴリズムをカメラに実装すれば、ホスト側の処理を介することなく、対象物の中心座標を特定できます。Baslerでは、実際の用途を十分に理解したうえで、カメラの性能を最大限に引き出すことで、業務の効率化と付加価値の向上に貢献しています。

中心座標以外の幅広い形状特徴の抽出にも対応
中心座標以外にも、カメラを介してさまざまな形状特徴を抽出できます。例えば、アスペクト比、円形度、面積、周囲長などの形状特徴は、はんだボールの均一性評価、ノズルの摩耗検出、粒子の分類をはじめ、対象物の形状や品質にかかわる幅広い検査に役立ちます。
さらに、形状特徴を抽出した後、カメラ側で解析と計数を実施すれば、良品・不良品の有無と数量を把握することも可能です。しかも、すべての処理はFPGA上で行われるため、レイテンシーやホスト側の負荷を発生させることなく、必要な情報のみをリアルタイムに収集できます。
Baslerの強み
スマートなシステム構築:カメラのFPGAに中心検出アルゴリズムを実装し、中心座標をセンサーレベルで特定することで、正確かつリアルタイムな位置合わせ・動作制御を実現
産業グレードの信頼性:一貫した性能を備えたカメラとカメラファームをご提供することで、撮影環境にかかわらず、優れた安定性と再現性を確保しながら、長期運用における保守労力も軽減
充実のサービス:専門スタッフのきめ細かな技術サポート(光学設計、同期設定、アルゴリズム調整など)により、幅広い検査装置の精度・スループット・拡張性を向上


