活用事例

高精度なID読み取りによる半導体製造のトレーサビリティ確保

ID読み取りにおけるコントラストや表面形状・質感の問題を解決

半導体の製造において、正確な追跡管理は欠かせません。以下では、ウエハーエッジ部、FOUP、フォトマスク(レチクル)、基板、ウエハーリングの文字認識(OCR)、コード読み取りをはじめ、さまざまなIDの読み取り精度を向上させることで、半導体の製造工程全体のトレーサビリティを確保する方法について解説します。

ウエハー加工から最終パッケージングまで
一貫したトレーサビリティを実現

半導体の製造工程全体において、一貫したトレーサビリティを確保するには、レーザー刻印、ドット刻印、印刷などにより、光学特性の異なる素材の表面に付された文字・コード(バーコード、マトリックスコード、QRコードなど)を正確に読み取らなければなりません。



Basler OCRツールを活用し、レーザー刻印されたウエハーIDを読み取る様子(文字のセグメンテーション・認識)
Basler OCRツールを活用したウエハーIDの読み取り

ウエハーID、フォトマスクIDの読み取り

シリコンウエハーのエッジ部の外側には、SEMI M12規格(英数字)またはSEMI T7規格(マトリックスコード)のIDがレーザー刻印されています。製造工程全体のトレーサビリティを確保するには、高精度なOCRとコード読み取りにより、ウエハーエッジ部の微小なIDを読み取らなければなりません。

一方、ウエハー上に回路パターンを転写するフォトマスクについても、リソグラフィ工程における適切な操作とトレーサビリティの確保を目的として、ガラス面やクロム膜の上にIDがレーザー刻印されています。

課題

  • 高反射・低コントラスト:シリコンウエハーの研磨面やフォトマスクのクロム膜は、コントラストが非常に低く、レーザー刻印された文字・コードの検出が難しいため、ID読み取りの漏れや誤りを防止する特殊な照明と画像補正が求められます。

  • 光沢(グレア)・鏡面反射:ウエハーエッジ部やフォトマスクのガラス面に対して一般的な照明で光を照射すると、光沢(グレア)や鏡面反射を引き起こし、IDの読み取りが困難になるため、同軸照明、偏光照明などの特殊な照明手法により光を拡散しなければなりません。

  • IDの歪曲・遮蔽:ウエハーエッジ部は丸みを帯びているため、IDの一部が歪んだり、隠れてしまうことがあります。しかし、特に高速撮影が求められる場合、標準的なレンズではこのような状況に対応できません。たわみのあるウエハーエッジ部や、フォトマスクの狭いエリアに付されたIDにピントを合わせ、歪みなく読み取るには、高解像度撮影と高度な光学設計が必要になります。



(左)ウエハーリングのバーコード読み取り (右)プラスチック製チップトレイのレーザー印字読み取り
半導体ウエハーのダイシング・仕分け・パッケージング工程の追跡管理におけるウエハーリングID(バーコード)、チップトレイID(レーザー印字)の読み取り例

ウエハーリングID、チップトレイIDの読み取り

ダイシングによって分割されたウエハーは、後工程(ダイボンディング、ワイヤーボンディング、パッケージングなど)に進め前に、ウエハーリングや基板に貼り付けられます。これらの器材には、加工・組立の工程ごとに個別のダイやロットを追跡するためのIDが付されていますが、金属特性、表面の摩耗、周辺環境の変化により、正確に読み取れない場合があります。

課題

  • 表面形状の不均一・照明環境の変化:ウエハーリングは、表面の傾きや凹凸により、照射した光が予測不可能な方向に反射します。しかも、クリーンルームの照明環境の変化により明暗差が生じるため、一貫した精度でIDを読み取るには、高精度な直接照明が欠かせません。

  • IDの経年劣化:度重なる温度変化、化学物質への暴露、機械的摩耗により劣化したIDを正確に読み取るには、画像を前処理する必要があります。

  • 低コントラスト:ポリカーボネートなどの高分子材料は、コントラストが非常に低いため、照明や撮影方法を工夫しないと、表面に刻印されたIDを上手く読み取ることができません。


Basler統合型ビジョンソリューション
による半導体IDの読み取り精度の向上

Baslerでは、半導体IDの読み取り精度を向上させるため、カメラ、レンズ、照明、ソフトウェアを自由に組み合わせられる統合型ビジョンソリューションをご提供しています。検査装置、ダイシング装置、加工装置に簡単に導入し、ウエハーID、ウエハーリングID、基板IDを柔軟かつ正確に読み取れるなど、優れた性能・適応性とスマートな機能により、素材種別・照明条件・作業環境にかかわらず、一貫した読み取り精度を実現できます。





カメラ

高解像度撮影:高感度センサーを搭載し、コントラストや文字・コードのかすれにかかわらず、細部まで鮮明に撮像可能

HDR(ハイダイナミックレンジ)撮影:反射性が高く、均一な光量の確保が難しいシリコン表面やクロム膜の撮影をサポート

照明

同軸照明(明視野照明):光を直接照射することで、ウエハーエッジ部、フォトマスクなどの平坦面・反射面の撮影に対応

ローアングルリング照明(暗視野照明):光源を水平に近い状態に配置することで、高分子材料製のウエハーリングや基板表面の質感・特徴を強調

プログラマブル照明コントローラー:照明モードを切り替えることで、素材や文字・コードの種類にかかわらず、同じ製造ラインで撮影可能

レンズ

テレセントリックレンズ(倍率0.5倍以上):視差による歪みを最小限に抑えながら、微小なIDを可視化

標準レンズ:画質(サブピクセル精度の撮像)より柔軟性(被写界深度の確保や撮影距離の変化への対応)を重視する場合に最適

オートフォーカス機能:動体撮影、厚さの異なる基板の撮影をはじめ、撮影条件が変化する場合でも、一貫した精度による読み取りが可能

ソフトウェア

AI-OCRツール:AIアルゴリズムベースの画像解析とディープラーニングにより、歪み・かすれ・傾きにかかわらず、正確な読み取りを実現

OCRツール&コードリーダー:従来型アルゴリズムベースの画像処理により、ウエハー、ウエハーリング、基板の文字認識とコード読み取り(データマトリックスコード、QRコード)をサポート


最先端の光学技術と多角的なアプローチを組み合わせたビジョンソリューションの導入に伴い、システム設計・ソフトウェア統合・システム運用の方法が多様化するなか、さまざまな新課題が生まれています。
David Kim
David Kim
フィールドアプリケーションエンジニア - ‍ソリューションビジネス部門チームリーダー

柔軟かつ高精度なID読み取りによる
半導体製造のトレーサビリティ確保



半導体の製造現場では、お客様によって撮影条件や検査要件が異なり、同一のIDを読み取る場合でも、ビジョンシステムの構成が大きく変わるため、柔軟なアプローチによるシステム設計が欠かせません。半導体業界の多種多様なニーズを満たすBaslerビジョンソリューションなら、素材種別、表面形状・質感、前工程・後工程にかかわらず、高精度なID読み取りが可能です。

Baslerでは、傾きのあるウエハーエッジ部、低コントラストの高分子材料、経年劣化した文字・コードを撮影するため、以下のようなソリューションをご提供しています。

  • 一般的なIDリーダーでは読み取りが難しい表面形状・質感への対応

  • 高度な画像処理によるシャープネスの向上・歪み補正

  • ディープラーニングアルゴリズムによる多種多様な文字・コードの読み取り

  • 検査要件やシステム要件に応じたカスタマイズサービスの提供

システム開発企業やシステムインテグレーターのお客様を対象に、耐久性や拡張性にも配慮したビジョンソリューションをご提案することで、前工程(ウエハー加工)、後工程(パッケージング)からその先に至るまで、エンドツーエンドの追跡管理を実現しますので、ぜひお気軽にご相談ください。


ID読み取りに関するご不明点やご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。