活用事例

線幅2µmのRDL基板検査向け高速ラインスキャンソリューション

アドバンストパッケージング工程の外観検査における課題と対策

KGD(Known Good Die)の確保にかかるコストの上昇に伴い、半導体製造の後工程におけるRDL(再配線層)基板検査が重視されるようになっています。また、銅RDLの線幅の微細化(2µm以下)や材料の多様化、多層化に伴う基板の反りは、検査の難易度を大幅に上昇させており、歩留まりの悪化、コストの増大、市場投入の遅延にもつながっています。以下では、これらの問題を解決するため、低コストでありながら、優れた速度を実現するRDL基板検査向けラインスキャンソリューションについて解説します。

線幅2µmのRDL基板検査向け高速ラインスキャンソリューション
線幅2µmのRDL基板検査向け高速ラインスキャンソリューション

最先端のRDL基板の検査要件

アドバンストパッケージングの重要なインターコネクト技術である高密度RDLは、FOWLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)、FOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)、2.5D/3Dシリコンインターポーザー、2.5D/3Dガラスインターポーザー、HBM(広帯域メモリー)、チップレットパッケージをはじめ、これまでにない寸法精度と信頼性が求められる用途に広く採用されています。なかでも、現在主流となっている銅RDLは、L/S(線幅/線間隔)=2/2μm以下まで微細化が進んでいるほか、ファンアウトパッケージングなどの高度なパッケージング工程においては、4~5層またはそれ以上の積層が行われる場合もあります。

しかし、このような多層RDL基板の外観検査(AOI)では、基板の反り、銅めっきのざらつき、高解像度撮影に伴うデータ容量の増大などにより、各層の検査精度にバラつきが発生していました。

RDL基板検査の課題と対策


ラインスキャン用ズームレンズの検出精度の比較
ラインスキャン用ズームレンズの検出精度の比較:絞り値f/3.2の場合、最小1.2µmの黒点欠陥(ピンホール)と最小2.0µmの白点欠陥(アイランド)を検出可能

高速製造ラインにおける2μm以下の微細な構造物の可視化

ナイキストの定理(標本化定理)によると、L/S=2/2μmのRDLに形成された銅配線を識別するには、0.87µm/pixelの分解能が必要になります。しかし、高倍率撮影を行うと、画質は向上しますが、視野角が狭くなり、スキャン時間も長くなります。

高倍率撮影に代わる方法としては、1画素=最小検出サイズとしたうえで、グレースケールの色差(ΔDN)に基づいて対象物を検出する1画素検出があります。例えば、ピクセルサイズ3.5µm×3.5µm、倍率1.75倍、物体側分解能2.0µm/pixelであれば、線幅2µmの銅配線を検出できます。さらに、検出サイズとグレースケールの関係性を定量化したうえで、検出しきい値を正しく設定すれば、欠陥と背景を識別することも可能です。

線グラフに示す通り、絞り値f/3.2の場合、最小1.2µmの黒点欠陥(ピンホール)と最小2.0 µmの白点欠陥(アイランド)を検出できます。

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欠陥の誤判定の原因となる銅めっきのざらつき
欠陥の誤判定の原因となる銅めっきのざらつき

銅めっきのざらつきの低減

多結晶構造の電気銅めっきのざらつきは、高倍率撮影時に欠陥と混同されるおそれがあるため、ビープスプリッター、同軸明視野照明、同軸暗視野照明を組み合わせて撮影を行うとよいでしょう。同軸照明にはレンズが内蔵されており、均一な線状光を安定して照射できます。また、モルフォロジー処理周波数フィルタリングなどの前処理を実施すれば、高周波数のエッジ部を強調しながら、低~中周波数のざらつきを抑えられます。

ノイズフロア≦3DN、均一性の変化≦2DN、銅めっきのコントラスト≦8DNの場合、アルゴリズムの検出しきい値をΔDN=10に設定すれば、1.2µmのピンホールと2µmのアイランドを安定して検出できます。また、ざらつきが強い誘電層や半透明の誘電層に対しては、偏光板と同軸照明を組み合わせるか、蛍光照明を使用することで、検出の安定性が向上します。

ファンアウトパッケージングに使用される多層RDL基板
ファンアウトパッケージングに使用される多層RDL基板

各層の検査精度の均一化

多層RDL基板の外観検査では、層ごとの光学特性の違い、基板の反り・変形に起因するアライメント不良、上層にある銅めっきのざらつきにより、検査精度にバラつきが発生します。

このような問題を解決するには、同軸明視野照明と同軸暗視野照明の切り替え、偏光板またはマルチバンド照明の追加、撮像時の被写界深度(DoF)と分解能の調整により、光学系と照明の挙動を安定させる必要があります。アルゴリズムについては、特徴分離フィルタリングと多点非線形歪み補正に加え、オンラインの前処理により、各層のノイズフロアとコントラストの一貫性を確保するとよいでしょう。

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5µm幅のラインペアテストによるレンズ性能の比較:同等仕様であるにもかかわらず、レンズA(青)はレンズB(赤)よりプロファイルの振幅が大きく、コントラストが高い
5µm幅のラインペアテストによるレンズ性能の比較:同等仕様であるにもかかわらず、レンズA(青)はレンズB(赤)よりプロファイルの振幅が大きく、コントラストが高い

スキャン速度と露光時間のバランスの最適化

FOWLPやFOPLPの工程では、誤判定の低減とスループットの維持に配慮しながら、さまざまな部位に隠れた2µmの微小欠陥を検出しなければなりません。そのため、複数のラインを合算することで、スキャン速度を下げることなく、 SN比(信号対ノイズ比) を向上させるTDI(Time Delay Integration)方式が広く採用されています。

ただし、TDI方式のメリットを最大限に引き出すには、超高帯域幅、広視野レンズ・照明、正確な同期、安定した機械動作が必要になります。また、TDI方式の導入時期導入方法を検討する際には、光学性能、タクトタイム、データ処理容量のバランスを考慮したシステムレベルの評価も欠かせません。

ハードウェアアクセラレーションによるウエハー検査のリアルタイムな前処理
ハードウェアアクセラレーションによるウエハー検査のリアルタイムな前処理

ハードウェアアクセラレーションによるリアルタイムな前処理

大容量のデータ転送が伴う高速検査では、ホスト側のCPU負荷を軽減するため、外部のハードウェア上で前処理を行う必要があります。例えば、フレームグラバーのFPGA上で、ノイズ除去、コントラスト補正、モルフォロジー処理を行えば、CPUに転送するデータ容量を抑えられます。また、フィルタリングによりエッジ部を強調しながら、銅めっきのざらつきを除去すれば、安定かつ一貫した高速検査が可能になります。

このように、前処理を行うことで2D画像処理の安定性は向上しますが、基板の反りによって被写界深度から外れてしまう場合は、ほかの対策が求められます。

ファンアウトパッケージングにおける基板の反り:RDLとモールド樹脂の熱膨張係数(CTE)の差により、RDL 1が RDL 4に変化
ファンアウトパッケージングにおける基板の反り:RDLとモールド樹脂の熱膨張係数(CTE)の差により、RDL 1が RDL 4に変化

多層RDL基板の撮影

3層以上のRDL基板の場合、基板の反りによってPV(Peak-to-Valley)値が40µm以上になり、レンズの有効被写界深度から外れてしまうことが多いため、2D画像処理では対応しきれません。この場合、3D画像処理の一種として、ミクロン単位の高さ情報を収集するレーザー三角測量を使用するとよいでしょう。

高速2D画像処理と3D三角測量を組み合わせれば、基板の反りによって被写界深度から外れてしまっても、2µmの微小欠陥を安定して検出できます。

線幅2µmのRDL基板の欠陥を検出するには、分解能と速度、検出感度と誤判定、被写界深度と基板の反り、データ容量とインライン処理の関係性を理解したうえで、最適なバランスを取らなければなりません。Baslerでは、外観検査装置の制約や製造目標、サンプルデータを確認したうえで、レンズの開口数(NA)、照明、前処理に関する実用的な試験とアドバイスを実施するなど、きめ細かな対応を心がけることで、スムーズな課題解決と開発作業の効率化・信頼性向上に貢献しています。
Benjamin Park
Benjamin Park
光学ソリューション部長 | Basler APAC R&D

Baslerラインスキャンソリューションのメリット

RDL基板検査向けの高度な外観検査装置の開発・設計を強力サポート。光学系、照明、画像処理に関する技術力とノウハウを活かし、優れた速度・信頼性と2µmの検出精度を実現いたします。

  • 銅めっきのざらつきや基板の反りにかかわらず、製造ラインの速度に合わせて2µm以下の微小欠陥を安定して検出

  • 暗視野/明視野対応の同軸照明とFPGA処理により、安定したエッジ検出を実現しながら、誤判定を低減

  • 分解能、タクトタイム、帯域幅のバランスをシステムレベルで最適化

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