マシンビジョンとAIによる高精度な海上物体認識
- 顧客
- SEA.AI
- 所在地
- オーストリア・リンツ
- 日付
- 2025年
最先端のマシンビジョン技術とAI(人工知能)を融合し、海を漂う危険物を検出することで、小型・中型船舶の安全な航行を支えているSEA.AI社製Watchkeeper。この海上物体認識システムには、過酷な照明条件下でも鮮明な撮像が可能なBasler dartが搭載されており、正体不明の物体や無灯火の物体を含め、さまざまな浮遊物の正確な認識と衝突リスクの大幅な低減に貢献しています。
マシンビジョンによるAIへの鮮明な画像の提供
カメラの撮影画像は、WatchkeeperのAIによる正確な物体認識・識別に欠かせません。しかし、海上では、海面の強烈な日光反射に加え、激しい明暗差や急な環境光の変化にも晒されます。このような過酷な照明条件下で鮮明な撮像を確保するには、さまざまな課題を解決しなければなりません。

過酷な照明条件下でも鮮明な撮像が可能なHDRカメラ
HDR(ハイダイナミックレンジ)撮影に対応したカメラを使用すれば、海上の過酷な照明条件下でも鮮明な撮像を実現できます。
急な環境光の変化への対応
ダイナミックレンジが狭い一般的なカメラは、海上の急な環境光の変化に対応できないため、過露光(白飛び)や露光不足(黒つぶれ)が発生するおそれがあります。一方、ダイナミックレンジが広いHDRカメラなら、明暗部の階調を正確に表現した高コントラスト画像を撮影できます。
海面の日光反射の低減
海面は太陽光を強く反射します。HDRカメラは、露光時間の短い画像と露光時間の長い画像を合成するため、撮影を妨げる反射やグレアを効果的に抑えられます。

Basler dart:高精度な物体認識に最適
Watchkeeperに搭載されているBasler dartには、以下のような特長があります。
優れた画質:内蔵のHDR機能により過酷な照明条件下でも鮮明な撮像を実現
ボードレベル設計:コンパクトかつ軽量で幅広いシステムにスムーズに接続可能
高速・高解像度:画素数8MP・フレームレート30fps対応
今回の事例では、Basler dartとNVIDIA社製Jetsonを接続しており、クラウドを介さなくても、オンボードによるリアルタイムなAI解析が可能です。このようにして、Basler dartが生成した高解像度のHDR動画をローカル処理すれば、浮遊物の認識・識別・追跡をよりスムーズに行うことができます。
Basler dartの詳細はこちら海上物体認識に特化したAI
海上の浮遊物を正確に認識するには、特殊な学習を行ったAIが欠かせません。WatchkeeperのAIは、一般的な物体認識システムと異なり、海上物体認識に特化しています。

海上の浮遊物の認識・識別
WatchkeeperのAIは、環境変化の激しい海上においても、危険な浮遊物を認識・追跡することができます。主な手順は、以下の通りです。
特徴抽出により、浮遊物の輪郭・形状・動きを検出
特長抽出データと学習済みデータを比較し、浮遊物の種類(船舶、ブイ、その他デブリなど)を特定
複数の画像から浮遊物の動きを追跡し、その位置や速度を記録
海の安全の向上に貢献するマシンビジョンとAI
SEA.AI社製Watchkeeperは、Basler dartによる鮮明な撮像と、オンボードによるリアルタイムなAI解析を特長としており、浮遊物を検出して船舶の乗組員に迅速に警告するだけでなく、浮遊物の種類も正確に特定することができます。また、サーモグラフィ撮影にも対応しているため、夜間でもスムーズな物体認識・追跡が可能です。
このように、最先端のマシンビジョン技術とAIの組み合わせは、海の安全の向上に大きく貢献しています。
SEA.AI社について
SEA.AI社では、海上の浮遊物の検出と船舶への警告を目的として、最先端のマシンビジョン技術とAIを融合した製品の開発に取り組んでいます。同社の海上物体認識システムは、船籍不明の船舶、海を漂う障害物、ブイ、ゴムボート、カヤック、落水者を含め、従来のシステム(レーダー、AISなど)では検出が難しかった物体でも、迅速かつ正確に認識・識別することができます。