被写界深度の拡張と複雑な立体構造の撮影に最適なシャインプルーフビジョンソリューション
コンパクトかつ優れたカスタマイズ性により、概念実証から実装までスムーズな導入を実現
外観検査において、物体表面の反りや浮き、複雑な構造を正確に検出するには、シャインプルーフ撮影により被写界深度を拡張する必要があります。しかし、光学系、アルゴリズム開発、機械設計に関する知識が求められるため、実際の導入作業は簡単ではありません。以下では、FPGAによる高速アルゴリズム処理、シームレスな機械設計、コンパクトかつ優れたカスタマイズ性により、概念実証から実装までスムーズな導入を実現するシャインプルーフビジョンソリューションについて解説します。
シャインプルーフ撮影のメリット
対象物を真上から撮影する従来の外観検査の場合、物体表面の反り、凹凸、微細孔、微細溝、側壁などの立体構造を捉えることが困難でした。しかし、シャインプルーフ撮影を導入し、対象物の表面形状に合わせてピント面を傾ければ、視野角全体にわたって鮮明な画像を撮影できます。
特に半導体のパッケージング検査、プリント基板の品質管理、プラットパネルディスプレイの欠陥検出をはじめ、高度な製造工程に使用される外観検査装置は、シャインプルーフ撮影への対応が欠かせません。
主な導入課題と対策
斜めからの撮像により立体構造の検査を効率化するシャインプルーフ撮影。しかし、この技術を外観検査装置にスムーズに導入するには、光学系の調整、アルゴリズムの最適化、システム全体の構築に関するさまざまな課題を解決しなければなりません。

被写界深度と開口数の関係性:シャインプルーフの原理の活用
一般的に開口数(NA)を小さくすれば、被写界深度は深くなりますが、その代わりに分解能とコントラストが低下してしまいます。
シャインプルーフ撮影では、対象物の表面形状に合わせてピント面を傾けるため、理論上の被写界深度を維持したまま、被写界深度を拡張した時と同じ効果が得られます。このような手法は、物体表面の反りや凹凸にピントを合わせたい場合に特に有用です。
つまり、用途によっては、シャインプルーフ撮影を導入することで、開口数の減少に伴うデメリットを相殺できるのです。

アルゴリズムによるリアルタイムな歪み補正
シャインプルーフの原理により斜めから撮像を行うと、遠近感が増すことで、近い部分がより大きく、遠い部分がより小さく映るため、台形歪みが発生し、正確な測定が難しくなります。
そこで、Baslerでは、画像座標をワールド座標へ変換することで、遠近歪みを低減する歪み補正アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、5ミリ秒以下のリアルタイムな処理と、サブピクセル単位の高精度な撮像を特長としており、放射状のレンズ歪みも同時に補正するため、実物の形状を正確に再現できます。

アルゴリズムによるコントラストの向上・均一化
シャインプルーフ撮影のもう一つのデメリットとして、レンズ収差、明るさのムラ、センサーの傾きによるエッジ部のコントラスト低下が挙げられます。Baslerのコントラスト補正アルゴリズムは、画質分布マップに基づき、異なる画像領域のゲインを調整します。こうすることで、コントラスト均一性が約80%改善し、ノイズも減少するため、エッジ部がより鮮明に可視化され、視野角全体にわたって一貫した画質を実現できます。
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FPGAによる前処理:CPU負荷ほぼゼロ
画像の前処理に伴うホスト側のCPU負荷を低減したいなら、歪み補正とコントラスト補正をFPGA上で行うことをおすすめします。並列処理が可能なFPGAは、画像の前処理に非常に適しており、CPUと比較して処理速度が10~50倍向上します。しかも、パイプライン構造を採用しているため、レイテンシーがほとんど発生せず、画像データの流れを止めることなく、すべての前処理を行うことができます。
このようにして、ホスト側のCPUリソースを画像解析に集中させれば、全体的な検査効率の向上にもつながります。また、FPGAは、同等の処理能力を持つGPUの約10分の1の消費電力で運用できるため、長期的なコスト面においても、産業用途に最適であるといえます。

アングルテストに最適な専用レンズマウント
シャインプルーフ撮影において、最適な傾斜角度を見つける作業は、非常に時間がかかります。Baslerの角度計付きカスタムレンズマウントは、繰り返しの角度調節に便利な見やすい目盛りと、一般的なカメラとレンズに対応した汎用性の高い接続機構が付いており、製品設計段階のアングルテストや傾斜角度の決定を含め、プロトタイプ開発とシステム構築にかかる時間を短縮できます。

コンパクトなチルトマウント式カメラ
シャインプルーフ撮影の導入において、角度調整と機械設計の複雑さは大きな問題です。特にシート状の印刷物や平坦な物体を検査する場合、従来なカメラ筐体では、傾斜角度を細かく調節できません。
Baslerでは、コンパクトなチルトマウント式カスタムカメラを採用することで、大型の外付けマウントや複雑な調節作業なしで、撮像面を最適な角度に傾けることに成功しました。このカメラは、機械的接続性と安定性にも配慮しており、システム全体のサイズを30~50%削減できるため、プロトタイプ開発と製造のいずれにも最適です。
チルトマウント式カスタムカメラに関するご相談はこちらお客様によって製品設計の課題は異なります。Baslerでは、カメラの傾斜角度の変更、センサーの調整、アルゴリズムの最適化などのカスタマイズにきめ細かく対応することで、迅速な製品化と長期にわたる安定した運用をサポートしています。

コンパクトかつ柔軟性の高いオールインワンソリューション
Baslerシャインプルーフビジョンソリューションは、高度な機械設計、スマートなファームウェア、リアルタイムなFPGA処理を一体化したコンパクトかつ柔軟性の高いオールインワンソリューションとして、物体表面のさまざまな立体構造の検査に最適です。
主な特長
被写界深度の拡張(3~10倍)とコントラスト均一性の改善(約80%)により、複雑な立体構造を鮮明に可視化
FPGAにより処理速度を向上させながら、歪みのない高精度な撮像を実現
コンパクトかつ優れたカスタマイズ性により、システム全体のサイズを30~50%削減できるため、スペースの限られた製造現場にもシームレスに導入可能