活用事例

リードフレーム検査におけるFPGAとCPUの性能比較

リードフレームの欠陥は、IC(集積回路)をはじめとする半導体パッケージの製造ロスとコスト増大につながります。しかし、微細化が進むリードフレームの検査には、ブロブ解析など処理負荷の大きい工程が含まれているため、従来のCPUから並列処理が可能なFPGAへの移行が求められていました。Baslerが開発したFPGAビジョンソリューションは、処理リソース、システム安定性、プログラミング難度の各方面でこれまでの課題を解決しており、高速・高精度が求められる次世代の自動外観検査(AOI)装置への導入が期待されています。

リードフレーム検査のブロブ解析におけるFPGAとCPUの性能比較 | データ転送速度:1GB/秒

高速・高解像度が求められるリードフレーム検査

リードフレームとは、半導体チップと基板を接続する金属部品を指します。リードフレームに欠陥(エッジのバリ、腐食、剥離、汚れなど)があると、電気的特性が低下するおそれがあるため、外観検査を行う際には、複雑なパターンを迅速かつ正確に読み取りながら、表面や形状に問題がないかを確認しなければなりません。

リードフレーム検査の課題

最近のリードフレーム検査では、速度・精度・システム安定性のすべてにおいて、厳しい要件が設定されています。  

画像取得:リードフレームの微細化、光沢素材の増加、素材の多様化に伴い、撮影時のコントラストを一定に保つことが難しくなっています。また、振動や環境光などの外部要因も画質に影響を与えています。これらの課題を解決するには、高画素カメラと対応するレンズを選定したうえで、場合によってはマルチスペクトルイメージングの導入も検討しなければません。Baslerビジョン製品を組み合わせれば、高性能の外観検査装置をシームレスに構築し、最適な撮像を実現できます。

画像処理:リードフレーム検査では、毎時10万個以上の処理速度によるリアルタイムかつ正確な欠陥検出が求められます。このような負荷の大きい検査では、画像データを処理する場所や方法を含め、ビジョンシステムの構造が最終的な精度を大きく左右します。

以下では、CPUとFPGAの性能を比較しながら、リードフレーム検査の厳しい要件を満たすうえで、FPGAベースのビジョンシステム が優れている理由を解説します。 

ブロブ解析:FPGAのエッジ処理

ブロブ解析では、高速で動く製造ラインに合わせながら、リードフレームの無数の端子をサブミクロン単位の精度で検出したうえで、対象となるピクセル領域の特性(大きさ、輪郭、位置など)を抽出しなければなりません。

image-pre-processing-diagramm

課題:逐次処理を行うCPUシステムは、ソフトウェアに回せるリソースが限られるため、大規模なブログ解析が難しく、検査精度が低下してしまいます。

ソリューション:並列処理が可能なFPGAシステムは、レイテンシーをサブミリ秒単位に抑えられます。また、FPGA上でブロブ解析を行うため、CPU負荷が軽減するだけでなく、検査精度も向上します。しかも、最新のFPGA搭載フレームグラバーなら、シンプルな前処理に加え、より高度かつ高速の論理演算も可能です。このほか、VisualAppletsを組み合わせれば、ハードウェアコーディングに関する知識がなくても、 FPGAベースの画像処理パイプライン を簡単に実装できるため、システムの開発・刷新にかかる工数が少なく済みます。

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FPGAとCPUのシステム構造の比較

FPGAシステム

CPUシステム

ブロブ解析

複数のピクセルパイプラインによる並列解析(1ピクセル当たり100+ OPS)  

スレッドベースの逐次解析 

レイテンシー

サブミリ秒(画像取得から判定までの速度) 

10~100ミリ秒(OSまたはソフトウェアにより異なる)  

消費電力

3.5~5W(最適な論理演算)  

15~30W(汎用演算)  

適応性

設定変更により異なるパターン・欠陥に対応可能 

ソフトウェアの更新・再学習が必要 

FPGAとCPUのリードフレーム検査結果の比較 

CPUベースのビジョンシステムとFPGAベースのビジョンシステムを構築し、リードフレーム検査の結果を比較しました。なお、 CXP-12対応カメラ(画素数:5MP、フレームレート:212fps) 、 PC環境、データ転送速度(1GB/秒)、解析対象のリードフレームは、すべて同一です。

FPGAシステム

CPUシステム※

ブロブ検出数 

2905

2648

画素数

5MP

5MP

フレームレート

212fpsを維持

17fpsに低下

CPU使用率

5.94%

40.8%

※実際の性能は、ソフトウェアアルゴリズムの設定によって異なります。CPUシステムは、フレームレートが低下しやすいため、ブロブ計数、画像の重ね合わせ、欠陥の分類などに影響が発生します。

リードフレーム検査におけるFPGAとCPUの性能比較
リードフレーム検査におけるFPGAとCPUの性能比較

まとめ:FPGAのエッジ処理による検査速度と精度の向上

エッジ側で画像データを前処理するFPGAシステムは、CPU使用率が大幅に減少し、システム安定性が向上するため、高速・高精度のリードフレーム検査が可能であるだけでなく、外観検査装置の拡張性と保守性の面においても大きなメリットがあります。

また、VisualAppletsを使用すれば、HDLプログラミングに関する知識がなくても、FPGAの複雑な論理回路をスムーズに設計し、実装できるため、検査要件に変更があった場合でも、迅速に対応することが可能です。半導体パッケージング技術が進化するなか、FPGAの導入は、単なるシステムの刷新だけでなく、システム構造の戦略的な移行にもつながる重要な動きであるといえるでしょう。 

渡邊 一隆 - バスラー・ジャパン株式会社 アプリケーションエンジニア

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