活用事例

FPGAによるリアルタイムな照明制御と信号処理

CPU負荷を抑えながら、迅速かつ正確なトリガーを実現

Baslerでは、フレームグラバーのFPGA上で外部照明コントローラーを直接制御することで、ホスト側のCPU負荷を抑えながら、リアルタイムな画像解析を実現するソリューションを開発しました。FPGA画像処理開発環境VisualAppletsを活用していることもその大きな特長で、画像の平均輝度を計算したうえで、事前に設定したしきい値に基づいて照明を自動的に制御できます。

リアルタイムな照明制御を実現するBasler FPGAビジョンソリューション

リアルタイムな信号処理の重要性

外観検査(AOI)をはじめとする産業用画像処理において、検査精度の向上と製造の効率化を実現するには、照明トリガーなどの信号処理をリアルタイムに行う必要があります。特に高速で欠陥を検出する場合、カメラ、照明、周辺機器をマイクロ秒単位の精度で同期しなければなりません。

このような高度なビジョンシステムを構築するには、CPU負荷を抑えた高速処理、製造ラインとの正確な同期、柔軟なシステム拡張などさまざまな要件を満たすことが求められます。しかし、従来のCPUベースのビジョンシステムの場合、大量のデータ処理と複雑な同期作業が難しく、レイテンシーやトリガーエラーにより、検査精度が低下していました。


レイテンシー対策:CPUからFPGAへの移行

ビジョンシステムの画像解析と信号制御において、レンテンシーや予期しないエラーが発生すると、外観検査の結果に大きな影響を与えます。

CPUビジョンシステムとFPGAビジョンシステムの比較

CPUビジョンシステムは、ソフトウェア上でトリガーロジックを処理するため、OSのタスク管理とバックグラウンド処理によって遅延が発生した場合、処理時間やトリガータイミングにバラつきが出て検査精度が低下してしまいます。

Basler FPGAビジョンソリューションは、このような構造的問題を解決するために開発されました。FPGAビジョンシステムは、フレームグラバー内部の単一のハードウェアパイプラインにより画像解析と信号生成を行うため、CPUに余計な負荷をかける心配がありません。しかも、信号処理も非常に速く、カメラ、照明、周辺機器を正確に同期できます。

バッテリー製造におけるマシンビジョンの活用

FPGAビジョンシステムは、マイクロ秒単位の正確な同期と撮影環境に応じた柔軟な拡張が可能であるため、高速で稼働する製造ラインへの導入に特に適しています。また、システム全体の処理時間も非常に短く、従来のように「画像解析の後に機器制御を行う」のではなく、「画像解析と機器制御を一括で行う」ことが可能です。このほか、CPUやGPUにかかる負荷も少ないため、より多くのリソースをほかの作業に回すことができます。

無限に広がるFPGAの可能性:照明制御以外の用途にも対応

今回のFPGAビジョンシステムは、照明制御に特化していますが、リアルタイムな信号処理と正確な同期が可能なFPGAを活用すれば、照明制御以外の幅広い用途にも対応できます。

リアルタイムな照明制御を実現するFPGAビジョンステム
リアルタイムな照明制御を実現するFPGAビジョンステム

照明制御向けFPGAビジョンステム

画像の平均輝度を計算したうえで、フレームグラバーのRS232汎用出力(GPO)ポートを介し、照明制御信号を照明コントローラーに直接送信するビジョンシステムです。ソフトウェアに依存しないハードウェアパイプラインを使用しているため、迅速かつ正確な処理が可能です

また、FPGAビジョンシステムの用途は、単純な照明のオン/オフにとどまりません。平均輝度計算アルゴリズムをほかの画像解析アルゴリズムに置き換えれば、照明以外のさまざまな外部機器を接続し、制御することも可能です

デモのお申し込み&個別のご相談はこちら

FPGAビジョンシステムの用途

拡張性に優れているFPGAビジョンシステムは、アルゴリズムや出力形式を変更するだけで、照明以外の外部機器の制御が可能になるため、システム構造を維持したまま、複数機器の同期や高度な信号処理などさまざまな用途に柔軟に対応できます。

また、照明制御に加え、FPGA上で画像の前処理(フィルタリング処理、ROI設定、データ削減など)を行うことで、CPUやGPUへ転送するデータ容量を最小限に抑えられます。さらに、FPGA上で複数の機器を同期すれば、高速インライン検査や高度なI/O制御も可能です。

このほか、Baslerでは、各種ロジックの作成とカスタマイズに便利なVisualAppletsもご提供しています。このソフトウェアは、フローチャート形式の直感的な操作画面を採用しており、ハードウェアコーディングに関する知識がなくても使用できるため、外観検査など要件の厳しい用途においても、撮影現場に合わせてシステムを柔軟に調整しながら、長期にわたって運用することが可能です。

主な用途

  • 高速インライン検査:リアルタイムな照明制御による製造ラインの撮影

  • 多品種製造:製品の種類に応じた照明の切り替え

  • 画質に基づく照明調整:撮影中の画質に基づくリアルタイムな照明調整

  • 高度な検査:複数の照明機器の順次制御/同時制御

Basler FPGAビジョンソリューションは、画像の前処理だけでなく、信号処理にも対応しているため、用途に応じてI/O信号を調整しながら、システムの構成機器を正確に制御することができます。
Sangrae Kim
Sangrae Kim
フィールドアプリケーションエンジニア - チームリーダー

「検査」から「制御」へ:マシンビジョンの最新動向

最近では、単純な検査作業だけでなく、リアルタイムな制御と処理に対応したビジョンシステムが求められるようになりました。このようなニーズの変化に伴い、高速画像解析、ディープラーニング、制御コマンドの実行などの用途を中心に、低レイテンシーのFPGAビジョンシステムに対する注目が高まっています。

特に予知保全、適応制御、リアルタイムな品質管理をはじめ、スマートなモノづくりが求められるインダストリー4.0においては、センサー、アクチュエーター、機械学習アルゴリズムの正確な同期が欠かせません。

関連製品

FPGAビジョンソリューションを構築するなら、以下の製品がおすすめです。

製品・サービスに関するご不明点やご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。