ICチップ印字検査&OCR(文字認識)向け
ビジョンソリューション
表面特性・製造規模・移動速度にかかわらず、優れた精度とリアルタイム性を実現
半導体集積回路(ICチップ)の製造現場において、トレーサビリティの確保・品質管理・偽造防止を図り、ロット別・サプライヤー別の工程改善と品質向上につなげるには、チップ表面の印字検査とOCR(文字認識)が欠かせません。以下では、さまざまな事例から得られた知見に基づき、ICチップの印字検査とOCRにおける主な課題と対策について解説します。

印字検査とOCRの複雑な作業フローへの対応
半導体製造の後工程では、最終組立の前にICチップの印字検査(チップ配置検査+印字品質検査)とOCRを行います。一見すると、通常の外観検査と変わらないように思えますが、実はチップ素材の違い、印字のバラツキ、高速撮影などにより、さまざまな課題が発生します。

1. チップ配置検査
主な課題
トレイ内に微細なチップが隙間なく並んでいるため、チップのズレや重なりの検出が困難
十分な解像度と視野角(FOV)を確保するには、画素数とセンサーサイズのバランス調整が必要
高速撮影を行う場合、サブフレーム単位の精度による画像取得・照明照射・処理作業の同期が必要
一般的な対策
静止状態のトレイをエリアスキャンカメラで撮影し、複数の角度からトレイ全体の画像を取得
ベルトコンベヤー上を流れるトレイをラインスキャンカメラで撮影し、シンプルな機械構成で高解像度画像を取得
二値化処理により画像を単純化
注意点
エリアスキャンカメラとラインキャンカメラは、それぞれにメリット・デメリットがあるため、実際の検査要件によって使い分ける必要があります。また、画像処理の際に形状解析やグレースケールによるROI解析を実施すれば、チップのズレや重なりを正確に検出し、製造工程の信頼性を向上させることができます。

2. 印字品質検査
主な課題
チップ素材の違いによってコントラストが変化
エポキシ樹脂:表面の質感・凹凸
セラミック:鏡面反射による光沢(グレア)
金属:散乱光による白飛び
チップ素材の違いによって照明均一性が低下
印字のバラツキ(つぶれ、かすれ、重なりなど)があると、固定閾値による定量化が困難
一般的な対策
同軸照明を使用し、光沢面・反射面の撮影に対応
ローアングルの暗視野照明を使用し、平坦面に質感を追加
HDR撮影により白飛びを抑えながら、低輝度部分とのコントラスト差を低減
注意点
印字品質検査においてトレイ全体のコントラストを一定に維持するには、机上の理論に頼るのではなく、実際の検査サンプルによる試験を実施し、レンズ、照明手法、照明波長、ディフューザー(拡散板)の有無、ゲイン値などを慎重に検討する必要があります。例えば、画像歪みを抑えるにはテレセントリックレンズが有効ですが、チップ高さの違いによる撮影距離の変化には対応できません。

3. OCR(英数字、コード、記号の読み取り)
主な課題
類似文字(数字の0とアルファベットのOなど)、文字間隔のバラツキ、文字の歪み・かすれにより、誤認識が発生
チップの反りやピントのズレにより、レーザー刻印時の印字に歪みが発生
不正確なセグメンテーション、低い信頼度スコアにより、読み取りエラーが発生
一般的な対策
テンプレートベースのOCRエンジンを使用し、既知の文字・配置パターンを認識
記号フィルターの適用やルールベースの検証(フォーマットの事前設定など)により、読み取りの安定性を向上
注意点
文字の歪み・かすれにかかわらず、類似文字を正確に認識したいなら、ディープラーニングベースのAI-OCRエンジンがおすすめです。ただし、最終的なOCR精度を向上させるには、OCRエンジンの選定・実装方法、認識誤差の許容範囲などをシステム全体の観点から検討する必要があります。
お客様の製造現場を支える
一歩先行くビジョンソリューション
HDR撮影、オートフォーカス、同軸照明、AI-OCRをはじめ、高度な画像処理技術を提供している企業は少なくありません。しかし、これらの技術を最大限に活かすには、実際の製造現場の状況を正確に把握する必要があります。
Baslerでは、チップ素材の違い・トレイの配置・撮影条件に左右されない一貫した精度と、簡単・迅速かつ信頼性の高いシステム導入を実現するため、ハードウェアの選定だけでなく、光学設計・画質評価・ロジック検証もトータルにサポートしています。その主な特長は、以下の通りです。
実際の検査サンプルに基づいて照明手法・ゲイン値・トリガーを調整し、検査の安定性を向上
視野角と解像度、コントラストと露光時間、画像歪みと撮影距離のバランスを取りながら、最適なシステム構成をご提案
必要に応じてカメラにHDR機能や照明制御機能を内蔵し、下流工程のプログラミング労力を軽減
あらゆる製造現場に即座に対応できる検査装置は存在しません。ICチップの表面特性・製造規模・移動速度にかかわらず、安定した印字検査とOCRを実現するには、光学設計・画像評価・ロジック検証を網羅した一歩先行くビジョンソリューションが必要になります。
お問い合わせはこちらソフトウェアや画像処理に問題があると思っていたのに、実は光学設計がネックになっていたというケースがよく見られます。照明角度やレンズ、カメラ筐体を変更するだけでも、検査装置の性能は大幅に向上します。
企画立案から製造ラインへの実装に至るまで
スピード重視のビジョンソリューション
一般的なビジョン機器を使用して印字検査とOCRを行う場合、試験段階で上手くいっても、導入段階で問題が発生するおそれがあります。実際の製造現場では、チップ素材や撮影速度に左右されない一貫した撮像精度と、製品変更に対応可能な優れた保守性が求められます。
Baslerでは、企画立案から製造ラインへの実装に至るまで、スピード重視のビジョンソリューションをご提案しています。各種機能のデモに加え、実行可能性の検証も行うことで、お客様の開発労力を軽減しながら、スムーズなシステム導入を実現しますので、ぜひお気軽にご相談ください。