ラボラトリーオートメーションで活用されるビジョン技術
幅広い分野で活用されるラボラトリーオートメーション
一般的にラボラトリーオートメーションという概念は、さまざまな意味に解釈することができます。その用途は重量測定などの単純なものからロボットによる分析システムや工程管理システム、保管システムといった複雑なものに至るまで多岐にわたり、医療、科学、医薬、分析などの分野においてカメラを活用できる可能性が広がっています。特に尿沈渣画像分析装置などにおけるカメラの使用が進んでいるほか、医師が診断を行う際にも、カメラの画像が裏で大きな役割を果たしています。また、機器の内部から実際の検査を間接的にサポートするカメラも存在します。採血の際の血管の透視、さまざまな試験における処理と結果の判定、病気のメカニズムを解明するための複雑な細胞研究など、バーコードの単純な読み取りからレーザー技術を応用した撮影に至るまで、その用途は幅広く、診断の高度化と治療法の革新につながっています。
医療・研究分野におけるオートメーションの傾向
オートメーションを導入する病院や研究所が増えていますが、オートメーションを推進する際には、以下のような点を考慮することが重要です。
1. 増大するコストへの対応
病院や研究所では、経済的な負担の増大に対応するため、サービスにかかるコストを削減する動きが進んでいます。最新の技術と低価格な部品でシステムを構築し、オートメーションを実現すれば、研究機器にかかるコストを抑えられるだけでなく、人の手による作業も減り、その労力を他に活用できます。
2. 高速化
処理速度が向上すれば、臨床機関や分析機関が委託された作業を行うのにかかる時間を短縮でき、競合先との差別化にもつながります。また、オートメーションによって、短時間でより多くの分析結果が得られるため、プロジェクトの期間自体が短くなり、新たな技術の早期開発や実用化が可能になります。
3. 品質管理の向上・品質の均一化
従来人間の手で行っていた試験の多くが機械で行われるようになり、高度な技術によって作業精度や再現性が向上しています。例えば、ビジョンシステムや自動顕微鏡などの登場によって、今では詳細かつ正確な画像データをモニター上で観察できるようになり、暗室での目視観察を行う必要がなくなりました。さらに、撮影された画像データは文書化やアーカイブに対応しているため、厳しさを増す品質管理システムの要件にも対応することができます。また、オートメーションシステムは、人間による作業のように誤差が生じることがないため、優れた再現性を有するだけでなく、品質の均一化も期待できます。デジタル形式の画像データは、科学的な意見交換や遠隔診療など、必要があれば異なる場所からでも同時に見ることができます。このように、カメラによる試験や分析を通して、より信頼性の高い診断を行える条件が整ってきています。
4. 新しい技術の普及拡大
ラボラトリーオートメーションを活用すれば、新しい技術を多くの人に効率的に届けられるため、病状を判断するための検査が素早く行えるようになります。その結果、体外診断による分子生物学的分析によって病気の早期発見が可能になるなど、病気の発症だけでなく、患者にとって大きな負担となる高額な治療の軽減や抑制も期待されます。病気が蔓延している地域では、医療関係者が十分な訓練を受けていないことが多いだけでなく、試験機器の精度が全体的に低く、患者の貧困率も高いのが現状です。しかし、操作が簡単で安価な機器が普及すれば、経済的に不安定でインフラが整っていないこのような地域での診断が可能になり、医療を改善することができます。以上のことから、ポイントオブケア(POC)やラボオンチップ技術は、今後ますます普及が拡大していくと予想されます。
ラボラトリーオートメーションが活用されている分野
カメラによるラボラトリーオートメーションが活用されている分野の例を以下にご紹介します。
1. プロセスオートメーション
画像やデータの取得といった一般的な用途にカメラが使用されているプロセスオートメーションは、純粋な分析ではなく、バーコードやマトリックスコードの生成といったプロセスの支援を目的としており、体外診断(IVD)機器に多く導入されています。体外診断機器は、患者のサンプルが入った容器の識別や使用した試薬から得られたデータの転送を行いますが、その際には分析のための計算処理を行ったり、品質管理用にデータを一括で文書化したりする必要があります。また、研究所の情報システムとの間でデータの自動通信を行う際には、これらの機器が要件に応じて患者のサンプルを正確に分類し、デジタル形式で管理します。
多くの研究機器では、サンプルとして液体も取り扱います。液体処理工程と呼ばれるこの作業では、液体の状態(分析結果に影響するため、気体を含まないようにしなければならない場合など)、容器の種類、容器の中に入っている試験対象物を識別するための蓋の色(血清が入った容器であるか、血液が入った容器であるかを識別する場合など)、液体の色の特性、層、不純物(気泡、泡沫)など、用途に応じてさまざまなパラメーターを決定したり、確認したりする必要があります。容器内の液体に直接接触して測定する方法とは異なり、カメラにはサンプルに接触する必要や蓋を取る必要がないというメリットがあるため、コンタミネーションなどの問題を防止することができ、作業効率も向上します。
2. 自動顕微鏡
自動顕微鏡には、体外診断(IVD)、ライフサイエンス、医薬研究、デジタルパソロジー関連用途で使用される光学顕微鏡と蛍光顕微鏡があります。
自己免疫疾患の診断、血液・造血器疾患の診断、さらにはデジタルパソロジーなど、カメラシステムはさまざまな診断機器メーカーの自社製品に採用されています。病理医は、組織や細胞のサンプルの病理的変異を検査するために顕微鏡で観察可能なスライドを用意し、病気の検査結果を導き出して診断や治療に関するアドバイスを行います。このような病理検査は、放射線検査などの他の方法で行うことはできません。
自動顕微鏡システムは用途によって他にも幅広い種類があります。靴箱の半分ほどの大きさの、細胞の単純な計数に使用される小型システムをはじめ、直接培養装置に設置し、人による操作なしで時間とともに移り変わる生きた細胞を撮影するシステム、さらには医薬成分のスクリーニングなどに使用されるハイコンテントスクリーニングシステムに至るまで、その可能性は無限に広がっています。
各研究用途に最適なカメラの選び方
上記以外にも、タンパク質や核酸の分析、微生物の分析、粒子分析など、科学分野におけるカメラの潜在用途や活用事例にはさまざまなものがありますが、それぞれの専門性に応じて最適な機能を有するカメラを選ぶことが重要です。カメラはその製品独自の機能とは別に、取付けの容易さや柔軟性、使いやすいSDK、そしてもちろん高い画質と信頼性が求められます。このほか、優れた技術サポートがあるか、十分な在庫があるか、納品スピードが速いかについても確認すれば、システムをよりスムーズに構築できるでしょう。
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