インダストリー4.0におけるコンピュータービジョンの役割
コンピュータービジョンはそんなITの根幹を成す技術であり、ロボットなどのハードウェアから画像処理、人工ニューラルネットワークの学習(ディープラーニング)を行うソフトウェアに至るまで、オートメーションの推進に必要不可欠なものであるといえます。
では、コンピュータービジョンの具体的な役割とは何でしょうか。スマートファクトリーを例に挙げて見ていきましょう。
約200年前に起こった産業革命を起源とするインダストリー4.0は、「第4次産業革命」と呼ばれることもあります。
スマートファクトリーが注目される理由
スマートファクトリーとは、ファクトリーオートメーション関連のIT用語で、生産工程などに関するデータを集約したインテリジェントな工場を指します。
データの収集はセンサーによって行われますが、その際に適切な処理を加えることにより、異なる機器間での情報共有や自動判断が可能になり、生産の効率化につながります。
スマートファクトリーの各種設備は、センサー、アクチュエーター、オートメーション機器(PLCなど)を同一のデータラインで接続するフィールドバスと呼ばれるネットワークによりつながっています。
また、工場設備は離れて配置されていることが多いため、一般的なフィールドバスにはリアルタイムイーサネットが使用されています。広く普及しているイーサネットは、ケーブルやスイッチなどのアクセサリー類が比較的安価で、ケーブルの延伸も容易です。
データ収集が可能なビジョンシステム
ファクトリーオートメーションの現場で設備の自動化に大きく貢献しているビジョンシステム。そのカメラを活用し、高性能センサーとして機能させる場合、以下のような構成機器が必要になります。
OPC UAによる工場のネットワーク化
ほかの設備と同様に、ビジョンシステムもハードウェア、ソフトウェアを含め、中央制御装置に接続しなければなりません。そこで登場するのが、共通プロトコルにより相互運用性を確保する産業用データ通信規格です。これにはさまざまな種類がありますが、なかでも汎用性の高いオープン規格として知られているのが、OPC UAを採用したumati(universal machine tool interface)です1。
OPC UAは、各種データ(センサーデータ、制御コマンドなど)をさまざまな機器で読み書き可能な形式に変換し、システムやセキュリティの構造に関係なく転送します。
しかも、センサーやアクチュエーターが設置されている現場レベルから総合的な情報が集まる経営レベル(ERP、SCADA)、さらにはクラウドレベルに至るまで、工場内のあらゆる階層への導入が可能であるという特長もあります。
つまり、同じ階層にある機器同士をつなぐ横のネットワークだけでなく、工場全体の情報を集約する縦のネットワークも同時に構築できるのです。
スマートファクトリーを効率的に運用するには、リアルタイムな通信が必要不可欠になりますが、OPC UA にはTSN(Time-Sensitive Networking)に対応したOPC UA TSNと呼ばれるバージョンもあり、ビジョンシステムの画像データを工場内の各種設備、制御装置に直接転送できるなど、これまで不可能であった機能が実現しています。
スマートファクトリーの可能性
スマートファクトリーでは、中央ノードとして機能するPLCにより、工場内のあらゆる設備・ソフトウェア、さらにはERPなど高階層にある基幹システムが一体化されます。しかも、高階層のシステムはクラウド環境に移動することも可能です。
ベルトコンベヤー、ロボット、ビジョンシステムのネットワーク化からOPC UA(またはOPC UA TSN)によるリアルタイムな通信、カメラのPTP同期に至るまで、さまざまな活用が期待されるスマートファクトリー。その可能性に今後も目が離せません。