産業用画像処理におけるオートフォーカスの活用
対象物や背景を鮮明に捉えることで、正確な分析・測定や品質管理を可能にするオートフォーカスは、以下のような産業用画像処理に活用されています。
距離の異なる対象物の撮影:撮影距離に応じて自動でピントを調整
高速撮影:高速で動く対象物の撮影を効率化
高精度な検査:対象物の細部を鮮明に捉えることで、解析や品質管理の不具合を低減
遠隔監視:手の届かない場所にあるカメラのピント調整をリモートで行い、保守点検やモニタリングにかかる労力を軽減
レンズ交換:レンズ交換に伴うダウンタイムを最小限に抑えながら、異なる撮影環境でも一貫した画質を実現
産業用画像処理におけるオートフォーカスの課題
高さの異なる対象物を撮影する時は、被写界深度(DOF)を深くし、絞りを小さくする(F値を大きくする)必要がありますが、光量の減少に対応するため、露光時間を長くしなければなりません。一方、高速撮影を行う時は、絞りを大きくして(F値を小さくして)光を取り込む必要がありますが、被写界深度が浅くなるため、ピント調整が難しくなります。
各種オートフォーカス方式の違いとメリット・デメリット
オートフォーカス方式には、大きく分けてアクティブAFとパッシブAFの2種類があります。両者はいずれも産業用途に使用されていますが、それぞれにメリット・デメリットが存在するため、以下で詳しく解説します。
アクティブAF
産業用途のアクティブAFは、一般的にレーザーを使用して撮影距離を測定した後、その距離情報をベースにしてピント調整を行います。
レーザーAFは、撮影距離の予測が難しい用途に対応できるだけでなく、速度や精度の面でも優れています。
しかし、システム構成が複雑になるため、コストが増大し、柔軟性も高くありません。
パッシブAF
パッシブAFには、位相差AFとコントラストAFの2種類があります。
そのうち、位相差AFは民生用カメラに多く見られますが、カスタマイズすれば、大規模な産業用途にも対応できます。
一方、異なる距離から撮影を行った後、画像の明暗差を利用してピント調整を行うコントラストAFは、システム構成がシンプルで、低コストかつ柔軟性も高いことから、産業用途に広く使用されていますが、別途AFアルゴリズムとレンズ制御機能を開発しなければなりません。
最適なオートフォーカスソリューションの選び方
技術的な観点から見ても、すべての問題を一度に解決できる完璧なソリューションは存在しません。そのため、用途や要件に応じて、最適なオートフォーカスソリューションを選ぶ必要があります。
以下の表は、4種類の産業用オートフォーカスソリューションのフォーカス速度、フォーカス精度、システムの柔軟性、システムの複雑さ、コストを比較したもので、それぞれのメリットとデメリットが一目でわかるようになっています。
精度が求められる場合は、コストが高く、システムも複雑であるものの、レーザーAFを選ぶとよいでしょう。一方、速度と精度をそれほど重視しない場合は、全体的に見てコントラストAFが最もコストのかからないソリューションであるといえます。ただし、コントラストAFを採用する場合は、以下の点に注意が必要です。
カメラ側でレンズ制御を行う必要がある
AFアルゴリズムを開発する必要がある
CPU負荷が増大する
コントラストAFソリューションの種類
プロジェクトの要件や優先度に応じて最適なソリューションをお選びいただくため、以下では、現在市場で提供されている複数のコントラストAFソリューションを比較していきたいと思います。
上記の比較から明らかなように、ハードウェアにかかるコストが低く、ソフトウェアの開発労力も抑えられることから、ソリューション3が最も優れているといえます。AFアルゴリズムを内蔵しているという点では、ソリューション4も同じですが、フレームグラバーの使用はハイエンドな用途に限られます。
開発期間に余裕がない場合や、開発チームの構築が難しい場合は、専門のビジョンソリューションプロバイダーに依頼するとよいでしょう。
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