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エンベデッドビジョンにおけるプロセッシングプラットフォームの形式

これまでコンピューターシステムで行っていた作業の多くに使用できる高性能なプロセッシングボードが近年増加しています。マシンビジョンの世界においても、産業用機器の小型化が進んでおり、かつてはサイズが大きく高価だったカメラが、今では非常にコンパクトかつ安価で製造できるようになりました。

小さなプロセッシングボードと小型化されたカメラモジュールを組み合わせた機器は「エンベデッドビジョン」と呼ばれており、医療診断機器から産業オートメーションに至るまで、幅広い用途で活躍しています。

従来のコンピューターの場合とは異なり、エンベデッドビジョンに使用されるプロセッサーには多くの種類があります。以下の記事では、プロセッシングプラットフォームのさまざまな構造とその形式についてご紹介します。

System on Chip(SoC)

System on Chip(SoC)は、エンベデッドシステムにおいて中心的な役割を果たしており、実際の画像処理もSoCの中で行われています。「SoC」という用語は「プロセッサー」と同じ意味で使用されることが多いですが、実際にはもっと多くの部品で構成されており、シングルコアやマルチコアのCPU(Central Processing Unit)のほか、GPU(Graphics Processing Unit)、インターフェースコントローラー(USB、イーサネット、I²Cなど)、システムバス、マルチメディアハードウェア(ビデオのエンコーダー、デコーダーなど)、電源管理ユニットといったものが1枚のチップの中にすべて収められています。つまり、SoCとは、コンピューターのコアとなる多くの機器をコンパクトに集約したものなのです。

現在主流となっている代表的なSoCには、NVIDIA社のTegra K1、Qualcomm社のSnapdragon 820、そしてNXPセミコンダクターズ社のi.MXシリーズがあります。

スマートフォンやタブレットの急速な普及に大きく後押しされ、SoCの開発は急速に進みました。SoCの自社開発には莫大な金額の投資が必要になります。Apple社やサムスン電子社などの大手メーカーではSoCを自社生産することができますが、多くの企業にはそれができません。

SoCはCPU、GPU、システムバス、インターフェースコントローラーなどで構成されており、実質的にはエンベデッド形式の計算ユニットであるといえます。

System on Chip(SoC)とは、多くのエンベデッドシステムで採用されているCPUのことで、メインプロセッサーのほか、インターフェースやI/Oなどの特殊な機能を持つさまざまな集積回路が1枚のチップの中に収められています。

System on Module(SoM)とは、完全なコンピューターシステムを1枚の小さなチップに収めたもので、完成品のモジュールとして使用できます。

System on Module(SoM)

技術系の中小企業は、板挟みの状態にあります。高性能な小型プロセッサーとして機能するSoCは、次世代の製品をよりコンパクトかつスピーディに開発するうえで非常に理想的ですが、一方で自社開発に莫大なコストがかかるというデメリットがあるため、これらの企業では、大手メーカー製のSoCを使用するしかありません。

しかし、トラデックス社、Inforce Computing社、SECO社のように、System on Module(SoM)やComputer on Module(CoM)を開発することにより、ピンチをチャンスに変えている企業も多くあります。SoMとは、SoCにRAM、電源管理ユニット、その他システム内の機器を制御するためのシステムバスを追加したもので、SoCよりもさらに実用性が高くなっています。例えるなら、SoCは外部の世界から遮断された工場であり、SoMは倉庫や電力供給、外部との連絡通路が加わり、工場長と連絡を取ることも可能な工場です。

SoMには、SoCを含むSoM内のすべての機器と通信を行う標準的な接続プラグが1つ以上搭載されています。しかし、これらの接続プラグでは外部の機器(ネットワーク機器、電源、カメラなど)と直接接続することができないため、実際にはキャリアボードが必要になります。

System on Module(SoM)+キャリアボード

上記でご紹介したように、SoCには接続機構としてインターフェースコントローラーしか含まれておらず、イーサネットコネクターなどの物理コネクターがありません。そこで必要となるのがキャリアボードです。上記のように、SoMの下部には標準的な接続プラグが搭載されており、キャリアボードと接続できるようになっています。キャリアボードは物理コネクターとして機能し、ディスプレイ、制御ユニット、カメラなどの周辺機器との接続に使用されます。SoCやSoMとは異なり、キャリアボードの開発は比較的簡単です。モジュラー構造のエンベデッドシステムであれば、市販のSoMを購入した後に、それに合わせてキャリアボードを自社開発することができます。この方法は、フルカスタム設計の場合(下記を参照)よりもコストが安く抑えられるだけでなく、キャリアボードに取り付けるコネクターの種類を自社で決められるため、非常に高い柔軟性があります。USBやGigE、その他の定評のあるカメラコネクターなど、どんなものでも使用可能です。ちなみに、28ピンのLVDSコネクターであれば、dart BCON搭載モデルを複数台接続できます。

注:別途物理コネクターを搭載した特殊なSoMも存在します。例えば、Baslerエンベデッドビジョン用PowerPackの中のザイリンクス社製SoC Zynqには、USB 2.0コネクターとGigEコネクターがあらかじめ搭載されていますが、このようなケースは非常にまれです。

System on Module(SoM)に物理コネクターとしてキャリアボードを搭載すれば、周辺機器に接続することができます。

フルカスタム設計とは、カスタムメイドの基板上にSoMとキャリアボードを組み込むことを指し、コストが大幅に抑えられるだけでなく、その用途に特化したシステムを構築できます。

シングルボードコンピューター(SBC)

SoMにキャリアボードを追加する以外に、シングルボードコンピューター(SBC)を使用する方法もあります。シングルボードコンピューターとは、1枚の基板(シングルボード)の上にSoM、キャリアボード、さらにその他の必要機器などを組み込んだもので、有名なものとしてRaspberry Piがあります。SBCの基板上には多数のコネクター(USB2.0×4、MIPI CSI-2×1など)があらかじめ搭載されており、キャリアボードを別途開発しなくても周辺機器に接続できます。SBCは非常に運用がしやすいというメリットがある一方で、コネクターの追加が難しいというデメリットもあります。例えば、柔軟性の低いSBCであるRaspberry Piに5つ目のUSB 2.0コネクターを追加することはできません。つまり、開発にかかる時間やコストが低い代わりに、柔軟性も低くなっています。特定の用途に特化したCPUを大量に販売したい場合、実際の用途に必要のないコネクターや部品があらかじめ組み込まれているSBCを使用することは賢い選択とはいえません。このことから新たに登場したのが、最新のエンベデッド構造を採用してフルカスタム設計を行うという考え方です。

フルカスタム設計

エンベデッド構造の多様性を十分に理解していただくために、まずはフルカスタム設計(FCD)について解説します。FCDとは、幅広い販売を目的とせず、特定の用途に特化した大型システム向けのシングルボードコンピューターを開発することを指します。そのため、FCDの場合は、顧客の要件に応じてカスタムメイドした基板の上にSoMとキャリアボードが組み込まれます。

例えば、医療機器メーカーが病気の疑いのある皮膚のシミの撮影やモニタリングを行うモバイル機器を開発したいと考えた場合、SoMにキャリアボードを追加する方法も考えられますが、SoMにキャリアボードを搭載すると非常にかさばるため、実用的であるとはいえません。さらに、この製品が大量販売される予定のものであるとすると、SBC(1枚の基板の上にSoMとキャリアボードを組み込んだもの)を自社でカスタムメイドしたほうがコストも安く済みます。このように、この例では実際の用途に必要な機器が限られているため、その用途に特化したシステムを構築することにより、コストを大幅に抑えることができます。

フルカスタム設計とは、カスタムメイドの基板上にSoMとキャリアボードを組み込むことを指し、コストが大幅に抑えられるだけでなく、その用途に特化したシステムを構築できます。

まとめ

エンベデッドビジョンにおいて大きな役割を果たしているプロセッシングボード。その設計方法には実にさまざまなものがあります。

生産数やノウハウ、下位システムの種類、画像処理の必要性にもよりますが、エンベッドビジョンには幅広い形式のものが存在しており、従来のビジョンシステムに小型のシングルボードコンピューターを追加したものから、カスタムメイドのキャリアボードを追加したSoMやSoCを搭載したモジュールシステム、さらには新登場のフルカスタム設計のシステムなど、多くの選択肢が考えられます。

プロセッシングプラットフォームに含まれる市販の機器の割合が高くなればなるほど、システムの開発コストや構築コストは高くなりますが、生産数が多くなれば、単価も低くなります。

お使いの用途に最適な形式のエンベデッドビジョンを検討される際に、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。